『おか…お母さん… んっ…!』
目を薄く開けると 人が見えた。
きっと 熱に浮かされたときに
お母さんが優しく看病してくれた
夢を見たせいだと思う。
『お母さんッ…』
思わずその人に抱きつき 胸に顔を
埋めた、 …あれ? なんかお母さんに
しては筋肉質だなあ?
でも、いいや 凄くいい匂い。
ちょっと汗の匂いがするけど
お香の匂い、少し甘いんだけど
ピリッとする様な香り これを
甘いけど刺激的な匂いっていうんだろう
お母さん、お香変えたんだ…
これもいいと思うけどお母さんには
甘い香りのほうがいいと思うよ
「オラ、てめぇ」
…?お母さんが動きながら喋った
カラン、と氷の音がする
『お母さん…?』
そんな、声低かったっけ?
びっくりして もそりと胸から
顔を上げた。
「誰が お母さんだ ちゃんとよく見ろ」
目の前には 世間的には男前で、
役者みたいな 綺麗な顔
『ギャアアアァァァアアァァァッ⁈⁈』
「うるせえ、黙れ」
ベシッ と額を叩かれ後ろに倒れると
バフッと布団らしきものに倒れる
『ひっ…土方っ…かよっ』
「かよってなんだ、かよって」
眉をひそめて土方が私の額に水で
濡れた布を乗せた そして体を離す。
「部屋の外からハアハア変な息づかいしてる奴が居ると思ってたら ドタンって物音が聞こえて、見たらてめぇが 倒れてた」
無事か、と土方に聞かれてコクッと頷く
『今日は休ませて、じゃあね。』
布団から這い出して周りを見るとやはり
土方の部屋だ 早く出て行きたい
「待て待て、安静にしてろ 使ってていい」
『やだ…や…』
高熱で意識が朦朧としていても動こうとすると土方に布団に戻された
そしてまた額に布を乗せられて
仰向けの私に布団をかけた
『やだ…』
「馬鹿野郎、やだとかの問題じゃねぇだろうが 病人が…自重しやがれ」
土方が布団の横から退いて机の引き出しをガサゴソしだした。
『何…それ』
「石田散薬」
『そんな薬…聞いたことない…ゲボッ』
土方が机から出してきた得体の知れない散薬に ゲッ…と顔をゆがめると土方が等々と語った。
「俺の家は武家じゃなくてな、俺はまだガキの頃薬売りしてたんだ」
『で…?凄い効き目なの?それ…』

