『ふわあっ…』
道場から自分の部屋に戻る途中
思わず あくびが漏れた。
フラフラしながら土方の部屋の前を通ると おい、と声をかけられた
『なに?』
声の主に少しムカつきながら
つっけんどんな声が出た
「茶、もってこい」 『自分で行け』
即答すると中からため息が 盛大
に 聴こえた
「てめぇ、小姓だろうが 茶もくめねえのか? 役に立たねえなあ」
…っ
『わ、わかったよ! 持って来たらいいんだろ‼︎』
役に立たねえ はないだろ
私は近藤さんに恩返しが
したいな、と思って 此処に
いるんだから!
急いで茶を淹れて、くっ
と、奥歯を噛む
くそー、あのクソ方め
人をなんだと思ってやがる
新撰組の副長だから、斬ること
できないし、ましてや
逃げることも 嫌だし
…イタズラしてやれ
『はい、持ってきたよ‼︎』
茶を盆にのせて 襖を開けると
広い背中が ピシリと伸びている
「ここに置け」
無愛想に土方が促した机の横に
カタリ、と置く
昨日の笑みはどこへやら
厳しい顔した鬼副長は湯のみを
持ちながら 机に置いてある
紙を睨みつけながら 凛々しい
唇を 湯のみにつけて
中の茶を 飲み込んだ

