しゃがみこんだ土方は 私と同じくびしょ濡れになっていたが 体に熱が帯びていた、おそらく雨の中を全力疾走したのだろう。
「…お前、雷が怖いのか。」
土方は しがみつく私を見ながら言って
苦笑した
「…それじゃあ人斬り鈴狐も形無しだな、びしょ濡れの俺が言えたことじゃねーが。」
『しょうがないだろ…苦手なものは苦手だ…っていうか、形無しってなんだよ
私は雨宿りしてるだけっ』
言い返しているが耳に手が乗っかっているので 脅しもへったくれもない。
「ほぉ? そうか。じゃぁ耳から手を離してみろ」
土方は 悪どい顔をして言い放った。
コイツ…鬼だ‼︎ その瞬間心の底から
鈴は その言葉を思った。
恐る恐る手を耳から離すと ものすごい音が耳をつんざかせた
ガラガッシャーーッン‼︎‼︎‼︎‼︎
『ぎゃああああッッ⁉︎⁉︎⁉︎』
叫び声をあげてまた土方の襟をつかんで引き寄せた。
「いらねぇ意地を張るな、お前の悪いところだ」『…鬼。…ばかぁ…』
ぶつぶつと文句を言っても
土方は苦笑しながら
ずっとそばにいてくれた。
「…どうせ雷が怖いから屯所に帰れなかったんだろ。」『……うん。』
うなずくと、土方はわずかに
私を 抱きしめた気がした。
「…無事で、なによりだ……」
びっくりして顔を上げると 土方は
ムギュ、と私の頭を押さえ込んだ
「浪士かなんかに襲われたかと思っただろうが…手間ぁかけさせやがって。馬鹿。本当に馬鹿野郎が。」
『うぐ…す、すまん。』
土方はどうやら私を助けるために追いかけてきてくれたらしい。確かにしばらくの間帰らなかったら騒ぎになるのも無理は無い。
それでも震える私を土方は大きい手で
戸惑いながらもあやすようになでた
「とにかくだ、すぐ帰るぞ屯所に。」
『ふざけるな…嵐が過ぎてから。』
雷が鳴っている中、歩けはしない。
そう思いながら前を向くと 土方は
濡れた黒髪を 邪魔そうに掻き上げた
そして立ち上がり、私に背を向けてしゃがみ込んだ
「おら、乗れ。…どうせ歩けねえんだろ。」

