私はいそいそと 空を見上げながら
屯所を出た。 京の町はしばらくいるので道は分かる、鈴を鳴らしながら 酒屋へと向かう。道のりには 涼しげな川が一本流れていた。


『…はぁ…こんな嵐が来そうな空
やだなぁ…。っ…!風も強いし…』

生温いような風が ビュウッ、と黒い
髪をなびかせた。
鼻に付く雨の匂いが漂っている


やがて酒屋に着くと 一番大きな酒の
壺を買って背中に紐で担いだ

「あんた、大丈夫かい?そんな細腰なんだから 腰痛めちまうよ。」
『大丈夫ですよ 意外と力強いし』

背中に壺を付けて店先に出ると
案の定、嫌になるほどのどしゃぶり
具合だ。 ため息をつきながら私は
赤い番傘を 雨空にさした


『うぇっ!…つめた。』


跳ね返ってくる雨が 肌にあたって
小さく呟いた。 周りには一人として
道に出てる者はいなかった 私には
帰りを急ぐ必要がある






その瞬間。







激しい 光が 目を眩ませた





その次に 耳を裂くような音




私は どしゃぶりの中 傘を投げ捨て
どこかともなく逃げ出した。