「…鈴!」
伊東の死体を平隊士達と油小路に
運んでくると 総司達が暗がりに
潜んでいたので軽く手を挙げる
『ただいま、運んできたけど
…そろそろ来る頃?』
原田たちの横に行って 身をかがめると
新八が ああ、と頷いた
「必ず御陵衛士たちは伊東の死体
を引き取りに来るからな、そこを
罠にかけるぜ」
『平助は助けてやらないと』
ぎゅっと噛み締めた唇が痛い
どんな汚い仕事をやっても
平助を助けられる唯一の方法なら
逃すわけにはいかない。
月がわずかに位置を変え始めた
頃、彼らはやってきた
「…⁉︎ あそこに倒れているのは」
何人もの足音、驚愕した声
伊東の屍を見て 憤る者。
全部で15、16人の御陵衛士が
伊東の元へ駆けつけた
そして、当然その中には平助が。
『……。』
そっと様子を覗くと まだこちらに気づいていないのかうつむき加減に伊東さんを見つめている、私の見る限りあの時のような太陽のように眩しい明るい表情は伺えない。
ごめんな、ごめんな…平助。
「行くよ」『うん。』「おう」「ああ」
総司が刀を抜いて 立ち上がり
私はその後ろを ついていき 彼らの目の前に立つ。
「…!…新八っつぁん…左之さん、それに総司。…鈴まで…」
平助が苦しそうにこちらを向いて
唇を噛んだ すると伊東の死体をから
御陵衛士の人たちが 顔を上げて
新八や原田を見た
「永倉!原田!…伊東先生を殺したのは貴様らか⁉︎」
悲痛な叫びが 平助の言葉をかき消した
それに、鈴は目をつぶり
闇夜に浮かぶような 刀を抜き
まるで 楽しそうに 笑った。
『私がやった…邪魔だったからさ‼︎
あんた達は私の逆鱗に触れたんだからッ‼︎ 近藤さんはやらせない‼︎』
「!?…お前は、華山鈴か⁉︎
伊東さんが可愛がっていたというのに
恩知らずなガキめ‼︎」
『そんなの、知らんな
…来いよ バァーカ。』
暗闇が 月に照らされて 火花が
散った。 私の横には総司が
笑いながら 刀を振るっている
互いの力がぶつかると 平助は
迷っているようだった。
どちらを味方にすればいいのか?
そんな迷いがあるような顔で
自分を守れる程度に刀を振っていた
新選組か、 それとも御陵衛士か。
ぽつん と孤立したような平助の姿が
まるで彼の心を表しているみたいで
私は 敵をなぎ倒しながら 闇夜を跳んだ
敵の頭を踏み台にして ひゅうんっ
と、跳ぶと 平助の前に飛び降りる
ここに来た目的は1つ
『平助、戻ってこい。私は
お前と 一緒にいたい。 …頼む』
ちりり…。鈴を鳴らしながら
立ち上がると 平助は 刀を握り
ながら 悲しそうに 後ずさった
「俺は…今更、戻れっこないよ。
伊東さんに着くのは国のためになる
そう思って、こっちの道まで進んできたんだ」
『今も、そう思っているのか⁉︎
原田を坂本殺しの犯人に仕立て上げようとした男だぞ⁉︎』
叫ぶと、平助は 力なく笑った
「確かに、間違ってるかもって思ったさ…けどその伊東さんを殺す新選組はどうかと思うけど」
迫りくる刀を叩き落としながら
平助の笑みは 自嘲していた
すごく悲しい笑顔。
平助を苦しめているのが私の言葉だと思うと 胸がグッと苦しくなる。

