伊東side
「はー…随分飲んじゃったわ…」
伊東は 近藤の別宅で酒会をした
後の夜道を歩いていた。
あの人達…まだ私たちが敵だということに気づいていないのね
伊東はクスッと笑いながら
上機嫌で 道を歩いていた
チリン。
「…あら?」
少し向こうの方で道の真ん中に誰かが立っているこんな夜遅くに1人で。
「……」
伊東は 目を細めながら その人に
近づくと その人も近づいてきた
ちりん、ちりん。
どこかで聞いたことのあるような鈴の音
チリンチリンチリン
だんだんと鈴の音が近づいてきた
すると月を覆っていた雲が立ち退いて
その人の姿が月光に照らされてくっきりと見えた。
「…⁉︎」
狐の面をかぶった 新選組の羽織を
着た男。
その人が自分の目の前にいた
距離はあと5歩も進めば手が届く
ほど。
伊東は 警戒して 刀を抜いた
「あなた、どなたなの?
顔をお見せなさい」
言うと 男は カチャ、と
刀を抜く。どうやら従う気はないらしい
月光に照らされる 長い髪
小さい背に、鈴の音
「あなたは…鈴さんね。」
『…。』
静かに問うと、おもむろにその人が
面を外して 首にかけたまま
唇を 三日月形にニッ、と笑った
顔はまるで女の子のように愛らしい
だが 立ち上る殺気は 獣のようだった
『伊東さん、久しぶりですね』
鈴を転がすような可愛い声が
夜空に響く。
『唐突ですみません…あなたの命
この華山がいただきます。』
鈴が 独特の形で刀を構える
『新選組を裏切った罰…死刑執行人は
私……大丈夫ですよ痛くないですから』
「…あなたを気に入っていたのに、残念だわ。けれど、私も死ぬわけにはいかないの…よッ‼︎」
ガシャーンッ‼︎‼︎、と刃が交わる音が
夜道に響き渡った、鈴の刀が伊東の
首筋に喰い付こうとギラリ と光りながら間を詰めるのを伊東が止めた
『流石です、北辰一刀流の先生の名前は伊達じゃないんですね?』
「ふふ、あなたにそう言われるのは
悪くないわ」
ニヤリと 鈴の頰が緩んだ
その瞬間
『だけど、やっぱり型にはまりすぎじゃありませんか?…ふふふっ 技が見え見えですよ? …それにッ』
鈴は唐突に 飛び下がり 刀を上段に
構えて 真顔になった
『本物の、人斬りと戦ったこと
ないですよね』
「ええ、まあそうね。 いつも不逞浪士
ばかりだわ。けれど、そんなこと関係ないわ‼︎」
伊東は 思いっきり刀を握りしめ
鈴の腹を斬ろうとした。
チリンっ
その戦いは、一瞬だけだった。
『関係、大ありですよ。人斬りは
人を傷つければ良いんだから…
剣の使い道が違いすぎるんですよ。』
京の 夜道は 鬼が出る
『…抵抗をしても同じだったのに』
鈴は 肉の塊となった伊東を見下げた
『さて、平助を返してもらうね。
伊東さん。』

