土方side
「居ねえと思ったら、こんなとこか」
登ってみると
屋根の上に 寝転がっている人影
鈴が 何処にもいないから少しだけ
総司が騒いでいたが やはり
初めて会った時に木の上でいた通り
こいつは高いところが好きなのか。
土方はため息を吐いて 上を見上げた
空が好きなのか、コイツは
気持ちいい風が 屋根の上に立ったまま
の土方の後ろに掻き上げた長い前髪
を揺らす。
目を細めながら 鈴に近づくと
美夜が鈴の傍らで包まっていた
美夜は 俺の足音に気づいて頭を上げ
体を起こして俺の足にすり寄った
そして少しの時間に俺にじゃれつくと
サッサと屋根から飛び降りて
庭に消えていった。
「…お」
おい、と鈴に声をかけようとすると
鈴の 本当に人間か?ってくらい整った
顔に目が惹かれた。
黙ってりゃ こんなに可愛い。
こいつがもうちょっとおとなしい
性格してるなら なお良いのに
鈴の寝顔に 駄目だと思いながらも
手が伸びて 指先が滑らかな頰に触れた
ぷにぷにだ。ガキの肌みてえ…
などと思いながらも指に吸いつくような感覚の 気持ちいい肌にぺた、と
手を当てた。
伏せられた長いまつげ
雪にみてぇに白い肌
整った鼻と 淡い唇
そして…力を入れたら折れそうなくらい
細い 首に 腕。
「……。」
起こそうとする自分もいるし
起きないでこのまま自分に
触れてさせて欲しい と思う
自分がいる。
『…コラぁ、土方。金取るぞ』
「っ⁉︎…起きてたのか」
『いや、今起きた』
ぐにー、と鈴の頰を引っ張って
いると 鈴が不機嫌そうに体を起こした
長い黒髪が 風に舞って きらきら
光を受けて 輝く。
「お前が姿見せないから屯所がちょっと騒ぎになってたんだぞ」
『過保護だなぁ…みんな』
鈴が目をこすりながらも苦笑した
『少しだけひなたぼっこをしていたんだ、てゆうか土方私の横に影を作るな』
邪魔、と言われて 俺はため息をつきながら後ろに移動する。
「はいはい、仕事しろ」
ぺし、と軽く鈴の頭を叩きながら
まだ騒いでいる下の奴らに報告しに
屋根から降りようとすると
鈴は後ろから 笑いながら言った
『私はまだ16…いや17なんだぞ
こんな小娘を捕まえて仕事しろなんて
人使いが荒いにもほどがあるな』
「馬鹿野郎 新選組に入った時点で
んなこと決まってんだよ 諦めて
働け」『うわー、暴虐‼︎』
「なんとでも言え、鬼の副長に
何言っても 右から左だ」
自分は汚れ役を買って そうして
この新選組を成り立たせている
新選組が被る泥を被りながらも
こうして進んできた。
泥を被りながらも、守らねえと
いけないがある。
『うわぁ…鬼ー。鬼の土方』
「…はいはい」
鈴は 俺をこけおろしながらも
楽しそうに笑ってた。
『まあ、でも。その副長の命令に従ってやってもいい。お前の命令は近藤さんの命令と同じ位だからな』
鈴は ぼそっと言った
俺はこいつに認められたのだろうか。
こいつの中の近藤さんと同じ位になっているのだろうか。
そう思うと 無性に嬉しくなった気がした
「…じゃあな 早く降りて来いよ」
一言だけ残しておいて 土方は
風で乱れた髪をまた掻き上げる。
「…もう17か、アイツも」
1年前のことが、まるで昨日のように
思い出せる。
俺は、鈴を初めて見た時から
惹かれていたのかも知れない。

