☆*:星降る夜に鈴の音.:*☆誠の華




『だーかーら‼︎猫に決まってる
だろう⁉︎』

ある昼下がりの屯所の広い庭に
鈴の憤った声がよく通る。
なにごとか、と土方が顔を
しかめつつ 廊下に出た

桜はまだ名残があり、庭は白い
花びらが舞っていた


「えー、鈴兄ちゃんなんか 女みてえ
だな。やっぱり犬だよ!」
『う…そんなの関係ないよ。
男も猫好きだよ‼︎なあ!総司。』
「あはは。」

庭には 三人のガキが居て
それの相手を鈴と総司がしていた。
おそらく、猫派か、犬派か
争っている 随分とアホらしい戦争だ。


「おい、コラ 鈴、総司 暇なら
そこで素振りでも…」

『土方‼︎いい所にきたな!』


鈴が 土方の声に嬉々として振り向き
素早く土方の側まで来て
ニコ、と笑っている


その目に 狂気じみた色が見えて
土方は ヤベエ。 と頭を抱えた

『土方?今から言う質問に答えろ
お前は犬より猫の方が好きだな?
2文字以内に答えろ。』


「テメェ、それ 〝はい〟か
〝おう〟しかねえだろ…質問が
おかs…」


カチャ。 「…はい。」

ニコニコ笑顔の鈴が土方の
首筋に愛刀を置いたので 土方
は抵抗せずに無血で鈴をなだめる。


『これで猫派が増えたぞー!
三人目だー‼︎』
「鈴兄ちゃん、さっきの怖い
おじさん脅しただろー!ずるいよぉ」
「…まだ俺は二十代だ…覚えとけ
ガキンチョ…」


嬉しそうに笑う鈴に、団子を貪り食う
総司、ほおを膨らますガキらを
土方はため息をつきながら
見比べる。

テメェら、全員ガキかよ。


「ま、いいじゃないですか
おじさん ニャンコ好きだし?」
「総司ぃ…喧嘩売ってんだな?あ”?」
「嫌だなあ、そんなんじゃないです。」


いつの間にか 縁側に座った総司
を上から睨みつける


「つーか…好きな動物を押し付けるんじゃねぇよ。もっとあるだろ、鳥とかよ
馬とかよ…」

『何言ってる、土方 愛でるべきものは
潤んだ瞳で にゃー、と鳴くのが一番だッ裏切り者め‼︎』

「それ猫しかないだろ。つーか
もともと俺は動物あまり好きじゃねぇ」

「そんなのだから土方さんは
鬼の副長って言われるんですよ?」

「関係ねえわッ!好みは人それぞれって割り切ねえのかよ」

『そんな優柔不断な事はできない‼︎
そんなこと言ってると寝てる時に
不逞浪士を連れてきて 土方の
部屋で首つらすぞ‼︎』

「…わかった。わかったから
早まるな」


恐ろしい計画を笑顔で言われたので
ため息をついて 眉を寄せた。
朝起きたら 知らねえオッサンが
天井から首つって 宙ぶらりん
半目状態が居たら その日1日
病みそうなことこの上ない。


『ふふん、猫の勝ちだ。』
「「「えー…」」」

ーーー

「アイツ、やっと割り切ったんだな」

土方が小さく呟くと 総司が
意味を悟ったように 笑った

「そうですね 平助たちがいないから
寂しいってこの頃言ってたから」

総司が 切なそうに 遠い鈴の
笑ってる横顔を見つめた

それは、自分ではなんとも出来なくて
悔やんでいる顔。


「げほっ…」「…最近咳が多いな
ちゃんと医者に診てもらってるか?」

総司が 下を向いて 口元を
押さえた。 変な咳だ。


「…大丈夫ですよ。少しだけ風邪気味なだけです」「…なあ、総司」

総司は立ち上がって 不敵に
笑った。

総司のあの鈴を見る 目が
同士を見る目じゃないのが
気になる。…コイツ


「なんですか」「お前、鈴の事…」

ザアッ…っ と強い風が吹いて
桜が舞って 薄桃色に空が 染まる
土方は 言いかけて、止めた


「なんでもねえ」「なんですか変なの」


総司が 首を傾けて 悪戯坊主の
ように笑って 鈴の横に
ゆったりとした歩調で歩いて行った

自分は何故 あんなことを聞こうと
したのか。 別にいいじゃないか
蓋をするって決めたんだからよ。

総司が鈴に惚れていても
聞こうとするのが間違ってる。


「…。」

土方は 横目で 鈴と親しげに
話す総司を見ながら 土方は
胸が苦しくなるのを感じた