宴会から 時が過ぎた。
楓が赤くなり、散り 雪が降り
暖かくなり始めた。
ーーー
季節はもう、春に近い。
私は屯所の庭の 桜の蕾を見上げた
『随分ここに来た時が経ったな…
また…春が来る』
「鈴」
後から名前を呼ばれて 振り返る
すると そこに立っていたのは総司
だった。 最近総司は具合が悪い
らしく よく咳をしているので
私は心配になる。
『総司、今日の具合は良いのか。』
「うん、まあね」
総司がいつものように悪戯っ子の
ように笑って 目を細めた
「…伊東さん 出て行くんだってさ
殺しちゃえばいいのにね。土方さんたち…」『出ていく?脱隊はたしか切腹だが』「ううん、新しく隊を立てるんだ。
新選組とは別に」
総司は 桜を見上げて言った
私には関係ないな、と思いながらも
話を聞いた。
「それでね?御陵衛士だってさ
前々から考えてたらしいよ〜…
ようするに隊を割ろうってやつだね」
『そうか』
苦々しい 思いでいっぱいだ。
近藤さんの同志たちを連れて
行くんだもん1人もあげたくない。
「それでね…?…平助と一君が
ついて行くんだってさ。伊東さんに」
『え…?』
私は 耳を疑った 平助も斎藤さん
も昨日まで話していたのに。
斎藤さんなんて、あんなに土方に
心酔して 副長、副長。って言ってた
のに。平助だって ずっと一緒に
いれると思ってたのに?
『二人とは、会えなくなる…のか』
私は 青空を見上げた
陽射しは暖かいのに、頭が冷えていく
そんな気がする
「友好的な関係を前提とした分離…とかなんとか近藤さんは言ってたけど…
交流は禁止するらしいよ」
「当然だ」
後ろで 厳しい声がした
振り返ると 土方がこちらに歩いて
来ていた。
「これ以上あいつらの好き勝手にさせるつもりはねぇ」
『本当にこれでいいのか、皆がここから居なくなっても』
静かに私が問いかけると 土方は
風に 目を細め、なんてことない。
と言うような顔をした
「伊東派が抜けたところで困る事
は無い」
土方らしいと言えば、土方らしい口調で事もなげに言ってのけた。
私はまだ 心の整理がつかなかった
「ま、平助と斉藤も一緒だって言うのは少しばかり計算外だったがな」
『…2人は私たちを裏切るのか』
私は刀を抜いて 陽射しに当てた。
眩しいほど キラ、と光を照り返す
「…本人たちに聞いてみろ。志は人には変えられねえからな」
土方はそれだけ言ったかと思うと
屯所から出て行った。
「…新選組がどう変わっても
俺は近藤さんについて行くけどね
もう平助と一君は…敵同士だから
斬ろうと思えば俺は斬るよ」
総司はそれだけ言って
屯所に帰っていった。
新選組が割れている。
揺らいでいる。
『どうなるんだろうね』
私は 独り言をつぶやいて
また、さっきのように桜の
蕾を眺めた。

