夕方、剣の稽古から帰って来ていると
向こうの廊下から伊東さんが歩いてきていた。 そして私の前に嬉しそうに立つ
「鈴さん、今日は稽古だったのね
鈴さんの武術は凄いってみんな言ってるわぁ。」
『はぁ、どうも』
前もそれ言われた気がする。とか
思いながら 嫌々世間話をしている
と 伊東さんが話しをきりだした
「鈴さん?今日は私たち 宴会に
行くの、新八君も斎藤君も平助君も
行くんだけれど…来ない?今日は
とても良いお酒を用意してあるの」
『私は、何度も言うようにお酒苦手ですから…』「甘味も用意しているわよ」
『……じゃあちょっとだけ』
と、言うと 伊東さんが 場所を伝えて
したり顔で笑いながら廊下を歩いて行った。最近伊東派が いろいろ後ろ暗いことしてる、と噂があるのだか…
まあ、いいだろう 少しぐらい甘いものおごってもらっても怒られる事は無い。
それにしても新八まで宴会に行くのか…
あいつ酒目的で行くんだろうなぁ。
私も甘いもの目的で行くんだが。
『…なーんか…いやな予感。』
鈴は 鈴を鳴らしながら 支度して
外に出た すると平助達が パタパタっ
手を振るので そちらに歩いて行く
「来たんだな、鈴」『まあ、甘味目的だけどね』
さらりと答えると、平助は苦笑しながら
道を歩いていくので その後ろをついて行くと 楓亭に着いた。
「あら、いらっしゃい。」
座敷に入ると 伊東さん達が お酒
を飲みながら 雑談していた。
私は 斎藤さんが静かにお酒を飲んでいたので近くに座って桜餅をぱくつく。
時間が経ってみんながお酒を
飲んでいくと 伊東さんがこちらに
寄ってきた。
「鈴さん?」『むぐ…なんですか?』
桜餅を食べながら 振り向くと
伊東さんが 口に三日月を浮かべながら
言った。
「鈴さんは…なにか攘夷に志はあるの?」『ないですよ?』
返事を返すと 伊東さんが驚いた
ように目を見開いた
「そうなのね…っ」『私、新選組に
居られれば十分なんですよ 私近藤さんを助けられたらそれでいいです』
「…あら…」
伊東さんが 少し残念そうにした
私は別に志も何もない。あるのは新選組への忠誠心と…みんなと一緒にいたいって言う願いだけ。
確か、伊東さんは長州の人達と同じ
考えを示している人たちを集めて
いるらしい。 それが 伊東さんの
後ろ暗い噂。
『ふふふ…』
にこ、と笑うと 伊東さんが
ウットリと私を眺めた。
「…伊東さん…話が。」
後ろの隊士に呼ばれて 伊東さんが
振り向いて 向こうに行った。
『…むぐ…ん…』
桜餅を食べながら 私は目を
細くした。 私は部屋を見回す
伊東さんの門下生が沢山いるが
その他にも平隊士がいた。
『…うら……ぎり…?』
小さく、鈴が呟いた
その様子を 斎藤が静かに見ていた。

