☆*:星降る夜に鈴の音.:*☆誠の華

土方side


「…っ お前ッ…」


月光に白い肌が晒された きらりと猫のような目が 土方を見据える。鈴の友人か、鈴から髪飾りをもらった人物だと思っていた人は…鈴本人だった。


紅い唇が 三日月を描いていた

瞳には あの時のように 涙が浮かんでる



『…はなせ。』

鈴が言うと、土方は手の力を緩めた
鈴はおもむろに畳に正座で 座り 土方を見上げた




『捕まえに来たんだろう?…早く殺せよ…別にもう逃げないから』


「…なに言ってんだ、殺しに来たんじゃねェよ」

『え…』

やっと見つけた、灯台もと暗しとはこのことだ。土方は眉をひそめながら 鈴が座り込む前へ膝をついた。

「…無事か?」


『私は裏切り者だぞ…無事もクソもあるか、早く殺せ』


鈴はまだ俺のことを疑っているらしい
捕まえて、安心したところを殺す。と、
考えていそうだ

土方はどうすれば鈴が 自分を信じて
また新撰組に来るかと 考えた


「テメェは裏切ってなんかいねえよ、みんなそれをわかってる…探してるぞ お前のこと。新撰組に戻ってこい テメェは新撰組に必要な人間だ」


『戯れは止めろ、鬼の副長が ンなこと
素面で言えるわけがない。耳が腐る。』


キッパリと 鈴が俺の心遣いを切り捨てた
疑り深いのも、限度というものがある
ピキ、と土方の額に青筋が浮かぶ。


「てめ、耳が腐る…だぁ?」

『…ッ。』


低い声を出すと 鈴が ビクッと体を
引きつらせて 目を硬く閉じた



鈴の紅い唇が きゅう、と締められる
まるで、泣くのを耐えるように。


「……。」 『…』


殺すなら、殺せ。と言わんばかりに
無防備に 凛と伸ばされた背。


「戻って来いって言ってんのが、聞こえねえのか?」

『もしそんな言葉を私にかけているなら、それは夢だ。土方が戻って来いなんて言わない。私は新撰組にいらない存在だ…いや、この世界にも必要のない…つまらない存在…』


こいつの自虐的な言葉が 口から溢れていっている。 あぁ うるせえ。


…俺の惚れた女を 自分でけなすんじゃねェよ。


心の中で そう、つぶやいて 鈴の
紅い唇を 己の唇で塞いだ。


もう、止めろ。

逃げるんじゃねえよ。

現実から目を背けるな

テメェの居場所は 夜の町じゃねェ

浅葱色した、美しくも晴れやかな
空の下だ。