『知らん、私は 嫌いだ』
思わず、よく屯所で使っていた言葉遣いが出てしまった。慌てて口を塞いで
すくっ、と立ち上がった。
「?、 おい」『すいません、失礼しました…他の者を呼びますので私はこれにて』
土方の言葉を無視して 私は廊下に近づいて襖を開け 外に出た
『失礼しました』
目をぎゅっと閉じながら
襖を閉めて 杏里ちゃんの部屋へ行こうとした。すると座敷の襖が開いて
中から土方が出てきた。
「待て、少し聞きたいことがある」
『なんですか』
腕を捕まれて 後ろ振り向きながら
顔を歪めた。さわらないで、もう近づかないで。
自分が無力で… 辛いから。
「お前、ちょっと来い」『えっ』
手を引かれて 手短な部屋に連れ込まれた。中は暗くて薄暗い 月明かりだけが部屋を照らしていた。
なんだかこの状況危ない気がする
てゆうか危なくないか?土方何する気だ
「嘘をつくな、真実を答えろ」
『…っ⁉︎』
いきなり目の前に、まばゆい光が通り過ぎた。
それは月光に照らされた 刀。
土方は刀を抜いて 私の首元に近づけたのだ、ヒヤリと金属の冷たさが肌に触れる
「お前は何者だ、名前を言え」
『つ、椿。』 「嘘つけ。」
土方の声が剣を持つ、 切れ長の目は私を見据えている。
ゴクリと 喉を動かした
やばいこれはやばい。ここで土方に殺されるかも…いや殺されないけどね⁉︎
でも今は刀を持っていない。
かんざしを使って土方の目を貫くか。
うん、そうしよう 刀で斬り付けたらそうしよう。←
『……』
土方をにらみ据えて 体を低く構える
「1年もこんなところに居たら
身を売らされてもおかしくねえ…
もう一度聞く、テメェは何者だ」
『…私は』
口を少しだけ開けた このまま言ってしまえば…。このまま言ってしまえば、土方は私を許してくれるだろうか?
私は許されないことをした
何日夜中 眠れなかっただろうか?
「早く、言え その身のこなしは…強いやつなんだろ、お前は。…長州の間者か…それとも。」
土方は 刀に少しだけ力を込める
土方はすっかりお見通しのようだ、私の人斬りの身のこなしなど。
『…。』
「喋らないつもりか…なら、良い
無理矢理にでも知ってやる」
土方は 壁に私を押し付けて
顎ぐいっと持ち上げた。そして面に手をかけられ、鈴は慌てた
『やっ、やめろッ誰か…』「黙れ」
抵抗しようとすると 土方に首を掴まれた
体を動かしても 男の力にはかなわない
『…っ…くっ…あ…』
力を込められ 息ができない。
苦しい、止めて…心の底からなにかが
こみ上げてくるような痛みを感じて
目が涙を浮かべる
「…。」
狐がニヤリ、と笑っている面の紐が
シュル と音を立てて 解かれていく
あぁ… あたし。 土方に捕まって
どうせ 殺されるんだろうなー。
私は少し 自嘲気味に笑った
だって、新撰組の副長を斬りつけた。
これは重要な裏切りだ
やがて土方は 面を私の顔から外した
面ごしに見ていた 土方のいやに整った顔が 鮮明に見えてた
切れ長の目を私は見つめた。

