『失礼します 椿です。』
襖を開けて 前を見ると 一瞬心臓が止まった。なぜなら…
「うはははー!」「土方さんまだ帰ってこないね…やっぱりね」「うんめー!なんだこれ!」
『…。』
開いた口が塞がらない、 目の前にいたのはどんちゃん騒ぎをしている…新選組の幹部連中だった。
「お、傾城椿舞姫‼︎スゲエっ」
「さあさあ、入ってくれ。」
平助と 近藤さんに手招きをされ
ギクリと体を強張らせる、私は面をつけている。気づかれてはいない
だけどっ…平然とできるまで神経太くない‼︎何島原に来てんの⁉︎いつも来ないくせにッ…‼︎
もしかして杏里ちゃんが
笑っていたのはこのこと⁉︎やばい、しかも総司もいるし…あれ、幹部連中…土方が居ない、よかった。絶対にバレるもん
『…っはい。』
顔を上げながら 渋々 座敷へ上がろうと
足を進めようとすると、後ろで誰かの気配がした。
「お前、早く入れ」『…っ』
後ろを恐る恐る振り返ると、怪訝な顔をした土方だった。心の中で悲鳴をあげてプルプルとしながら 三味線を持っている朝霧さんの所へ近づく。
「ほな、よろしゅう」『はぃ。』
消え入るような声で返事をして、舞扇を懐から取り出した。
チャンっ…。三味線の音が凛と部屋に響き渡る ここまできたら腹をくくって
しらを切り通すしかないッと 下唇を噛んだ。
みんなの懐かしい顔を見て、泣きそうになりながら舞を舞う。あー もう見ないでよ…総司と土方の目が怖ぇよ…。
『…。』
舞が終わって一礼すると 部屋の中が拍手喝采になる。
「すげーッすげーよ、アンタっ」
「素晴らしすぎる!」「これは顔見せなくても人気になるわ…」
『…』
みんなの言葉にまたお辞儀をして
扇を懐にしまいこむ。
「おい、酒を注いでくれ」
低い声が真横でして、背中に冷や汗が伝う。空気読めよ貴様…私じゃなくて
もっといい舞妓がいるだろうがっ
『は…い。』
怒りに ピクピク顔を震わせながら
土方の横に 座る。 …動けてるから傷はもう治ったのか。あのときのことが脳裏によぎって、怒りが悲しみに変わる
「……」『……。』
心の中で詫びながら 酒を注ぐと
土方が 切れ長の意志の強そうな目が細められてうまそうにお酒を飲みほした。
飲む速度が速くて こいつ、本当に大丈夫か?悪酔いしないか?と心配になる。

