「あれ、が」
島原で人気の 傾城椿舞姫と言われる
女…。 遠目で見ても背が低くて、華奢で
…面の下には 確かに美しい顔を思わせるほどの身のこなし。
『…?』
俺の視線に気づいて 女がこちらを
見た。
『…。』 「……」
もしや、鈴の音はアイツからしたのか?
睨みつけるように 女と目を合わすと
女は プイッ、と顔を背けて スタスタ
廊下の先に消えていこうとした。
「あ、おいっ…待てっ」
小走りに 追いかけると廊下の角を曲がったところで 跡形もなく見えなくなった。
「…見失った、か。」
おそらく、部屋に居るはずだ
捕まえて確認しなければいけない
アイツから聞こえた 鈴の音。
必ず、鈴の情報を これでもかってぐらい
搾り取ってやる。
土方は 鬼の副長と呼ばれる
冷徹な顔で 歩みを進めた。

