土方side
島原につくと 久しぶりの島原独特の
空気に あてられる。
「うっわー!スゲエ美人ばっかり!」
「姉ちゃん、酒ついでくれ!」
部屋に着くと早速 舞妓たちが2人やってきてニコリと微笑む。
「おばんどすぇ、失礼します。」
随分と美人二人だ、だが 面を着けた奴
ではない。
「なあなあ、何て名前?」「桜、どすぅ」「そっか、桜か!」
ニコニコしながら 左之が酒を飲み込む
ぐるり、と周りを見渡すと
平助は 総司に絡まれてるし、
新八は左之と同じで 舞妓に相手してもらってるし。
斎藤は隅で静かに酒を飲んでいる。
近藤さんは その斎藤に話しかけて
笑っている。
なんか、暇だな。
土方は部屋の賑わいから
ふい、と目を逸らして窓の方を見て 酒を飲む。
酒は美味い。唯一の楽しみだ
…どれだけ飲んでも飽きもせず
けろっとしてる、と総司に言われる。
ーーー
「少し、ここの庭見てくる。」
「早く帰ってこいよ?トシ。」
近藤さんに言うと 近藤さんは
ニヤリ、と笑いながら冗談を言った
女を引っ掛けるな、と言う意味。
…俺はどこまで信用されてないんだ
「…わかってる。」
むす、としながら 襖を開けて 廊下に
出て 天月亭の 美しいと評判の
庭を見に行く。
今日は、少し涼しい。
夜風が気持ち良かった。
「ここ、か。」
赤い艶やかな廊下を歩いていく 舞妓に
場所を聞きながら 庭に来た。
「………。」
目の前の 赤い柵の中に 酔いも冷める
ような美しい 花々が咲いていた。
島原の灯に照らされて、
紫陽花、桔梗…それになんとも言えぬ
香りを放つ 梔子…それぞれが夜露に
濡れて 輝いていた。
チリン。
花々に魅入っていると 微かに聞き慣れた
鈴の音がした、途端に 体に熱が這い上がるような衝動に駆られる 。
「…っ?」
どこかで聞いたことのある音色、それは…鈴の艶やかな黒髪を高く 結んでいた 髪飾りの音だ。
「…鈴、か?」
周りを見渡すと 1人の女が 自分を挟んだ花々の柵の向こう の廊下を歩いていく
凛と、歩く姿。
花々が 霞んで見えるほど 凛々しい。
その中でも 異色の…狐の面。

