『え?今日夜中いっぱい 仕事なの⁉︎』
驚きで目をまん丸にして言うと
杏里ちゃんが へえ、と笑みを浮かべる
『随分と物好きだね?ふぅん。面で
顔隠してんのにー』
「あらあら、鈴さん 一日中いっぱい
予約取りたい人もぎょうさんおるんどすよ?でも、今回は特別なんどす。」
『へ?なんで。』
もっと目をまん丸にして聞くと
杏里ちゃんはクスクス笑いながら
ゆっくりと首を振って 小悪魔のような可愛らしい笑みを見せた
「ひみつ、どす。」
『えー?』
怪訝に聞くと 杏里ちゃんにはぐらかされる
「さあ、着替えまひょな?もう少しでいらっしゃるやろうから」
『うん。』
頷いて、髪についた鈴の髪飾りを
シュル と取り外し 見えないところの
腕のところで蝶々結びにする。
『笹舟さんとやるの?舞』
「いいえ、今日は 笹舟さんは
予約が入っているので 朝霧さんとです」
『朝霧さん⁈朝霧さんってたしか
島原でも 凄い三味線うまかったような…笹舟さんもうまいけど。』
本当に 特別なんだねー。と
言うと杏里ちゃんが 何故か黒い笑み
で私の髪を結い上げていった。

