『失礼します』
私の声が 座敷に響く。襖を開けると
杏里ちゃんと笹舟さんが 客にお酒を
注いでいた 客は5人浪士か…
客の腰にある 刀をチラ見する
「!…お前、何故面を被っているのだ」
客の1人が目を見開き 驚いたように
言った。
『…見せられる 顔ではないので』
「こ、この子 椿ちゃん。いうんどすー
怖がりやから…堪忍して下さい」
私の 座敷の中での芸名は 椿。
杏里ちゃんは 小毬 (コマリ)。
笹舟さんは 舟唄 (フナウタ)。
やっぱり こういう座敷に上がっている女の人たちは名前を変えているらしい。
「…フン。おい椿とやら、酒を注げ」
『はい』
面の下で ほっと息を吐きながら
男の横に座り トポトポ と透明な
酒を紅い器に注いでいく。
ーーー
ずいぶんと時間が経って
男たちがいい感じに酔ってきた頃
笹舟さん…もとい舟唄さんが
三味線を取り出した。
「椿はん?一舞せえへん?」
椿さんは私が舞が舞えることを
わかっていたらしい。
それまで暇で暇でしょうがなかった私は
嬉々としながら 懐から舞扇を取り出した
「椿、舞えるのか?」
男が驚いたように目を見開いた
どういう意味だテメェ。
あん?私が舞えないように見えたのか
しぐさでわかるだろうがクソ。
浪士ならそれぐらい分かれよ
笹舟さんでもわかったぞ?目ェ腐ってんじゃねえの。
ばーかばーか
その ビックリした目ん玉 もっとひん剥かせて やる。
私は狐の面の下で ニヤリ、と笑った

