手に、今ついたであろう 鮮血は
土方のだろう。
直感的にそう思った
『ご…めん。痛かった…よね?』
鈴が 刀を拾い上げて 少女を
睨みつける
「術が…きかない⁉︎」
少女は 狼狽えたが 私には なんら
関係無かった。
バッ…
と、血飛沫が少女の首から
噴き出した。
「ぐっ…クソっ…」
尾崎清太郎が 後ろに下がるが、
一歩、一歩と近づく。私の瞳は
少女の血を浴びて、赤く濡れていた。
妖しい月が私を照らす。
「くそおおおッ‼︎」
尾崎が刀を振り上げた。
私は、刀で、ガシャーンッ‼︎‼︎と
受け止めて 無機質な声を出す
『両親に…ヨロシクね』
ザクリ。手に肉を斬る感覚が
広がる
バタン、と尾崎が腹と口から
血を吹いて倒れ、絶命した。
『すまない、すまなかった』
私は ボロボロと涙を流しながら
浅葱色の、新撰組の象徴を脱ぎ捨てた。
そして、土方と総司の目を見て言った。
『もう、バイバイだね。ごめんね』
「おいっ…テメェ。逃げる、な」
土方が ギロ、と私を見た
ズキン、と胸が痛む 土方の背は
もはや ボロボロだ。
『すまなかった。お前たちのこと
忘れないから』
できれば、私のことも、忘れないで。
その言葉は口に出さず丸呑みした。
「待てっ…」 「鈴‼︎」
止める二人を残して、私は逃げる
私は、強くなんてない。
階段を転げるように降りると
近藤さんが前にいて、にっこりと笑っていた。
「鈴君、無事御用改めは終わったぞ」
『……ッ』
私は目を背けて、池田屋を飛び出し
夜の京の町に逃げていった。

