「・・・ちゃん、紗夏ちゃん・・・」


「ん・・・ぁ・・・」


私は目をさまし、体を起こした。


しかし、体に激痛が走り断念した。


「紗夏ちゃん、大丈夫?」


「あ・・・・雅さん。」


「鎮守の森で倒れていたんだよ。


母娘を守るように。」


「と、いうことは・・・?」


「ああ、無事さ。」


「良かった・・・。」


雅さんは徐に私の額に人差し指と中指を当て、「解(かい)っ」と小さな声で呟いた。


すると、体にたまっていた疲労感はスッとなくなり、体を起こしても激痛は走らなかった。


「・・・また、力を使ったみたいだね。」


小声で耳打ちをしてくれる。


「・・・はい、すみません。」


「仕方がない。


母娘を守れたのは事実だからね。」


「はい、以後気を付けます。」


「うん、そうだね。」


そういうと、雅さんは満面の笑みでこう言った。


「紗夏ちゃんに、小さな訪問者がいるよ。


今、宿舎の一階に居るから会いに行こうか。」


「・・・?」


私は体を起こそうと、左手を付いた。


すると、強烈な痛みに襲われた。


「痛・・・っ」


「あぁ、紗夏ちゃん。

左手を深く切ってるみたいだからね。

お医者さんに包帯を巻いてもらったから。」


そういって雅さんは私の肩をつかみ、起こしてくれた。


「ありがとうございます。」


私はお礼を言った後、雅さんとともに宿舎の一階へ向かった。


「・・・あ、こんにちは。」


畳部屋の中央に置かれた低いテーブルの前に正座していたのは桜ちゃんのお母さん。


桜ちゃんは紙風船を突いて遊んでいた。


「このたびはご迷惑をおかけいたしました。


桜が迷っていたところを助けていただきありがとうございます。」


「いえ、大丈夫です。」


「それでも、桜を助けていただいたことに変わりはありませんから。」


そういって深く正座のままお辞儀をする。


私は立っているのがなんだかもどかしくなって私も正座をした。


しばらくお茶を飲みながら天気の話をしていると、私の肩をツンツンと付かれた感触が。


私は振り向くと、桜ちゃんが満面の笑みで立っていた。


「お姉ちゃん、助けてくれて、ありがとっ!


これ、あげる!」


そういって差し出されたのは紅葉が張り付けられている紙と千歳飴。


「ふふ、桜ちゃん、ありがとう。


お姉ちゃん、とっても嬉しいよ。」


「良かった!


また、会えるといいね!」


「うん、そうだね。」


桜ちゃんは神社を出ても、曲がり角を曲がるまで手を振り続けていてくれた。


私もお返しするようにずっと手を振っていた。