百合香が反応すると私たちの足元から突然赤い腕が出てきた。


そのままズズズッと体も出てくる。


・・・吸い込まれた村人だ!


恐らく、村人は地面の中を自由に移動できるのだろうか。


村人は手前にいた雅さんを狙いに定め、ゆっくり、ゆっくりと向かう。


雅さんは短刀をギュッと握り構える。


雅さんの2メートルくらい手前にとまった村人は足に力を込め、一気に雅さんの元まで向かう。


雅さんはそれに応じるように左へジャンプして避け、そのまま腕を振り回す。


手に持ったナイフが村人の腹へ食い込む。


しかし、村人は物ともせず再び雅さんへ向かう。


雅さんは短刀の先を村人のむけるように構える。


村人は雅さんの首を狙った。


が、短刀の先が村人の胸元に軽く刺さる。


雅さんはそのまま村人を短刀で地面に倒し、深く刺す。


そして、「呪解(しゅかい)」と大きな声で言う。


村人を中心に大きな魔方陣のようなものが一瞬で構築される。


鳥居前にいた村人たちの足元にまで及ぶ。


「呪(まじな)いを浄化し、安らかなる永遠の眠りを授けよ。」


雅さんが言い終わるとドミノ倒しに村人らが倒れていく。


雅さんと百合香、そして私は胸の前で手を合わし合掌をする。


「・・・・・・これで、安らかな眠りにつけたはずだ。」


「・・・ええ、そうね。」


「・・・っ!?


雅さん、あれ!」


私が山の方を見るととんでもない大きさの地滑りが起こっていた。


「たぶん、村人らの躯が引き出された影響だね・・・!」


沙捺たちも轟音に気付いたのかこちらへ回ってきた。


「・・・儀式はうまくいったはずよ!


とにかく逃げましょう。


林道を抜けた先に防火扉がついた建物があったはずだわ。


遙香、案内しなさい。」


「はい、此方です。」


遙香が雅さんたちを案内する。


私たちも雅さんを追う。


林道に差し掛かり、日の照る量が少なくなる。


そして、何処からか花いちもんめの歌が聞こえる。


『勝って嬉しい 花いちもんめ 


負けて悔しい 花いちもんめ』


花いちもんめの歌詞だ。


実は、歌にまつわるある言い伝えがこの村にはある。


【神社の裏手の雑木林の林道に入り、日が照らなくなり、花いちもんめの歌が聞こえたらすぐに林道を抜けなければならない。


最後の歌詞が聞こえてしまったら別次元へ連れ去られるであろう。】


「みんなぁ!


早くこの林道を抜けてぇ!」


「・・・紗夏さんも!


早く、走ってください!」


雅さんたちは何が何だかわからないというような表情。


『相談しよう そうしよう』


最後の歌詞だ。


私はそのままドサッと倒れ、意識を失った。