徐々に瞼が開いてゆく。


完全に目を開けるとそこは夏神神社。


あたりを見渡すと望美、希美、遙香が立っていた。


「・・・幻覚はおしまいです。


あの後、私と沙捺様が協力して儀式を施しました。


再生にはもう私の力は不要です。」


「・・・ねえ、沙捺は?」


「神社の広場にいるでしょう。


この神社の裏手にあります。」


私は直ぐに立ち、沙捺のもとへ行った。


「姉様、おいで下さいました。


・・・あの幻覚は遙香が作り出した過去の記憶。


よくお判りでしょう?


私が・・・滅びと再生の儀を施した理由が。」


「・・・夏目の呪いの連鎖を止めたかったのでしょう?」


「・・ええ、そうね。


夏神に頼めば何とかできるかもしれない。


そのためには一度、村を再生しなければならないの。」


「・・・呪いの連鎖を止める・・。」


「ええ、そうね。」


私は脳裏に木葉の言葉が浮かんだ。


【妹殺しの悲しみを知ってもらいたくて私はあんた達に呪いをかけたの!】


・・・もしかしたら、夏神に頼んだだけじゃ呪いを止められないかもしれない。


「・・ねえ、沙捺。」


「・・・なんです?」


「もしかしたら・・・もしかしたらだよ?


頼むだけじゃ呪いの連鎖が止まらないかもしれない。」


「どういう意味です・・・?」


「7つの儀式のときに先代巫女から聞いたんだ。


呪いは先代巫女本人がかけたものだと。


妹殺しの悲しみを知ってもらいたくてかけた呪いだと。」


「・・・言いたいことはわかりました。


私を姉様が殺さなければ止められない、ということですか?」


私は否定も肯定もしなかった。


「・・・呪いの連鎖を止めるためならば自身の犠牲も構いません。


・・・姉様に殺されるのはとても嬉しいことです。


ね?」


そういって沙捺は笑みを浮かべる。


どこか悲しみも見える。


「沙捺様、再生の儀式の準備は終了しましたか?」


望美と希美が言う。


「・・・ええ、位置について。」


「やめて・・っ!


前にも言った、この村を死者の躯(むくろ)だらけにはしたくないの・・・!」


「それは、姉様個人の願いでしょう?


私たち夏目の巫女の願いは呪いを連鎖を止めること。」


・・・沙捺は”個人”を強調した。


そう言われればそこまでかも知れない。


「・・・紗夏様、お願いしたのは私です・・・。


蹴れどもここまで準備が進んでしまえばもう・・・」


望美がか細い声で言う。