・・・簡単に言えば灰色のオーラ。


老婆の背中がキラリと金色に光り、老婆の目つきが変わる。


『・・久しぶりじゃな、夏神の潮来よ。』


「そうじゃな・・・伸介よ。」


伸介・・・?


・・木葉を殺した人と一緒にいた武士だ。


今は潮来の声で会話をしているという、とても奇妙なシチュエーション。


『・・・ほう、さしずめあの女を殺せ、と?』


「なんでもお見通しじゃの・・・。


さあ、我の躯を使い、女をかえらぬ人とせよ!」


「・・さ、掛かってきて。」


沙捺は手を挙げ、黒蝶を呼び寄せた。


「一二三・・・七匹か・・・。


飛具を使いて何がある。」


「この蝶は大切な武器よ。」


「飛具を用いた攻撃など、たかが知れている。


調子には乗らんほうが身のためだ。」


伸介・・・いや、老婆は何処からか刀を手に持ち、沙捺へ切りかかった。


「武士ともあろう人が・・・


目に見えているものだけを信じるなんてね・・・。」


沙捺は屈んで交わし、手で老婆の足を払った。


老婆はバランスを崩すものの、手を軸にすぐに体制を整えた。


「まぁ・・・さすが200年前の武士ね。」


「はは・・・


褒め言葉と受取ろうか。」


「それじゃ・・また始めましょう?」


老婆は沙捺の背後に素早く回り、刀を振り落す。


「・・・残念ね。」


沙捺は黒蝶を老婆の首元へ飛ばす。


しばらくして老婆がぐったりと地面に倒れこむ。


「・・・ふふ、やはり200年前の武士であっても黒蝶には立ち向かえないのね・・・。


さ、滅びと再生の儀をさせてもらうわ。」


立っているのは私と沙捺、それに遙香だけ。


沙捺たちにしてみれば沙捺と遙香だけだけど。


「・・・夏目の巫女よ。


本当に、この村を滅ぼす気?


・・・まあ、私には関係ないわ。


・・・ねえ、それと・・・」


「・・・今年生まれた巫女のこと?」


「・・・ええ、名前は望美と希美だそうよ?


・・・出産者は余所者だけれど生まれたのはここですから・・。


おそらく夏目の巫女になりうるのでは?」


「・・・ええ、そうよ。


私の仲間になるのね・・・。」


フッと微笑みながら沙捺は言う。


対照的に遙香は無表情で淡々と言う。


「・・・滅びと再生の儀を行いましょう。


私も協力するわ。」


「・・ありがとう、遙香。


それじゃあ・・・」


神社の広場に向かい合うようにして座った沙捺と遙香は同じタイミングで同じ言葉を発した。


「「夏神よ、我のもとに降臨したり、願いを叶えてはくれんか」」


私が見ている幻覚はそこで終わった。