私の目の前にふわふわと情景が浮かんでくる。


・・・この光景は・・・


夏神村の神社だ。


神社の広場に11,2歳くらいの少女がいる。


少女は美しい羽衣を着ている。


青と白のコントラストが映える。


少女はこの村の独特の文化、華の舞を舞っている。


しばらく見惚れていると、村人たちの話し声が聞こえた。


「まぁ・・・、平野さん家の遙香ちゃん。


随分と舞が上手になったわねぇ・・・。」


・・・少女は遙香・・・?


「まだ11歳なんて思えないわよねぇ・・・。」


・・・11歳。


正確な年齢は聞いていないけれど遙香は確か17、8歳くらい。


つまり6、7年前?


・・・これは、遙香による幻覚?


「愚か者!


神聖なる舞を冒涜する気か!」


突然、遙香が叫んだ。


持っていた扇子を閉じ、ある方向に向けた。


私も釣られてみてみると岩の上にビデオカメラを置き、舞を撮影している光景が見えた。


【もちろん、部外者・・・余所者がビデオカメラで撮影するなどは夏神への冒涜とも捉えられます。】


遙香がそう言っていた。


撮影していたのはうすベージュ色のつなぎを着た男女数名。


「愚か者!


神からの天罰を受けるがよい!」


遙香が叫び、男女数名がバタバタと倒れてゆく。


私は助けようと一目散に駆ける。


岩の陰で倒れていた男女たちはピクリとも動かない。


私は心臓の音を聞こうと左胸に耳を寄せた。


―――――――聞こえない。


心臓の音が一切聞こえない。


・・・ああ、死んでしまった。


夏神からの天罰、なのか?


神社を埋め尽くすようにいる村人らは男女たちが倒れているのを確認した後、何もなかったかのように舞を再び見始めた。


・・・そういえば、私の姿を見ても何も驚かない人がいる。


姿は見えているのか?


・・・少し、話しかけてみよう。


「あの・・・」


「やっぱ、腕が上がったわね。


息子のお嫁さんにしようかしら?」


「あんたの所の息子には勿体ないさ。」


・・・恰(あたか)も私が存在しないかのように話を続ける。


・・・やはり、姿は見えていない。