目を覚ますと、見慣れない天井が目に入った。


「おや・・、目を覚ましたみたいだね。」


声のしたほうに振り向くと長髪に淡い紺色の装束を身に着けた男性が正座で座っていた。


しばらく目をパチクリしていると、男性が口をあけた。


「こんにちは、僕は雅といいます。


君は?」


「紗夏、夏目紗夏です。」


よく思えば警戒心の欠片もなかった。


「紗夏ちゃんだね。」


男性、雅と名乗った人はそそくさと部屋を出てゆく。


しばらくすると、盆を持ち部屋へ戻ってきた。


「よかったら卵粥、食べる?」


「・・いいんですか?」


私は京華さん以外の人から優しさを受けたことがなく、とてもうれしかった。


粥を食べさせてもらい、礼を言った。


「何から何まで、ありがとうございます。」


「大丈夫。


困っている人を助けるのは当然だからね。」


話を聞くと、雪上に倒れていた私を雅さんが助けて下さったそう。


「・・・紗夏ちゃん、ちょっといいかい?」


後ろから呼び止められ、振り向く。


「巫女、さんなのかい?」


「・・・いえ、違います。」


「じゃあ・・・巫女服は・・・」


「・・・・・・」


「夏神村の子、だね。」


「ご存じ、ですか。


私がここにいるだけであなたにご迷惑をかけてしまいます。


ですから、失礼させていただきます。」


「・・・ここは、君が倒れていたとこより遥かに遠い場所だ。


ここを立ち去ったところで戻れるとも思えない。」


「・・・そう、ですか・・・。」


「どうするつもり?


・・・どう考えても君は子供だ。


ここで面倒を見てもいい。」


「・・・え?」


「実はね、ここ。


神社なんだ。」


「・・・えっ・・・?」


なるほど、装束姿なのにも納得いく。


「それで、今、巫女さんが足りないんだ。


と、いうか今までいなかったけれど。」


「・・・はぁ。


それで・・・?」


雅さんはにこっと笑い、言った。


「ここで、働いてみない?」


私は承諾し、雅さんのもとで見習い巫女として働くことになった。