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異色な3世代家族のような3人は、皮膚科の診察室前の長椅子に並んで座った。
高橋さんは意外にも饒舌(じょうぜつ)で、自分の現役時代の自慢話をうれしそうにしゃべり続けた。恩義のある私が大袈裟(おおげさ)に相槌(あいづち)を打つと、高橋さんはますます上機嫌になった。
寝不足の私が睡魔と死闘をくりひろげ危なくノックダウンをくらう直前で、天使が声をかけた。
「高橋さん、診察室へお入りください」
外来の看護師に呼ばれ、高橋さんは名残惜しそうに独り診察室に入っていった。話の続きを診察室でしなければいいのだけれど。
高橋さんが席を離れると、私と吉元さんを区切っていたつい立は消え2人の間には和やかとは正反対の空気が流れた。
吉元さんは、よせばいいのにお尻を私の方へ寄せ座り直す。そして、私の顔を見ながらわざとらしく考えながら言った。
「ねっ、ハムスターじゃなくって……モルモットじゃなくって……」
「莉栖花です。
わざと間違えてますよね」
とあきれて言ったが、吉元さんは
「ああ、リス、リス。
子リスね」
と、やっぱり人の名前を覚える気はさらさら無いらしい。
吉元さんは私の不機嫌など意にもかいせず、続けた。
「子リス、夏休み中ずっとお父さんの仕事手伝うかい?」
「人手がいるときはそうなるでしょうね。
わたし、お父さんに弱みがあるんで」
「何しでかしたのさ」
「お父さんのカード勝手に使っちゃって…借金があるんです」
「ふうん」
「まっ、夏休み中働いても借金返せないんですけどね」
だるそうに首を左右に倒し、コキコキと音を鳴らしながら、吉元さんは恩着せがましく話した。
「じゃあさ、子リス。
あんた、あたしの仕事手伝ってもいいよ。
お父さんの仕事と、かぶってない時だけでも。
特別だよ。
恵まれない未熟者を助けるのは大人の使命だからね」
華子さんの予想外の申し出に、ざわっと鳥肌が立つ。私はファミコン名人の連打並みの速さで掌を左右に振り、早口で言った。
「いえいえ、お気づかいなく。
私も夏休み中はすることが色々あって忙しいんです。
ブログ更新したり、好きなバーチャルアイドルの動画検索したり、その動画自分用に編集したり、アイコラ作って自分のツイッターに載せたり……
あー忙しい」
吉元さんは私の話を勝手にシャットアウトし、カバンから取り出したメモ用紙にさらさらと何か書いた。
「はい、これあたしのメルアドと携帯番号。
家帰ったらすぐそっちの送ってね。
すぐだよ」
吉元さんに押しつけられたメモには、まぎれもく個人情報が……
「えーー?手打ち?
できるかなー」
