カリス姫の夏



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カリス
<悪魔のナースに私たちの関係
 バカにされた
 ネットはリアルより下だって!!
 腹の虫が収まんない
 鼻あかしたい
 この渋滞いつまで続きそう?
 分かる人教えて

>状況よく分かんないけど
 カリス姫 困ってる
 誰か調べて

>主の信用するサイトではまだ35分以上かかると
 その後流れても目的地到着は50分以上

>後処理 予想以上にかかってる
 車両どけられなくて片側通行もできず

>事故処理の車両が到着できないと

カリス
<早く行く方法ない?

>迂回(うかい)する方がかしこい

カリス
<迂回?
 迂回したら何分で着く?

>しばし待て

>私の地図ソフトだと15分で行ける

>いや
 そこ一方通行多いから複雑
 もうちょっとかかる

>誤差考慮しても20分

>間違いない

>ナビするから

>応援する

>イケル

>ネットの力 見せてやれ
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「迂回する方が早いって。
みんなが……
仲間がそう言ってます」


私は振り向き、持っている力を全て集中し断言した。


「へぇ、迂回したら何分で行けるって言うのさ。
あんたのお仲間は」


吉元さんは挑発するように、嫌味ったらしく質問した。なぜだか、普段は避けて通るガラスの破片だらけの道を、今日はあえて通りたい。通らなければならない使命感まで、湧いてくる。


「迂回したら20分。
20分で行けます!
絶対に‼
私の仲間が手伝ってくれるって言ってます」


胸を張る私を見る吉元さんの目は、冷めたい。吉元さんは何かしばらく考えると、片方の口角だけ上げて意地悪く笑い尋ねた。


「自信……あるの?」


「あります!!」


きっぱりと言い切る私に、自信などない。あるのは、この吉元さんの鼻をあかしたいという欲求と、ネットのみんながついてるという安心感だけ。


吉元さんのメガネの奥の目がキラリと光った。


「分かった。
じゃ、あんたの言うとおりに行ってみようじゃない。
今からタイマーセットするから。
20分よ。
1秒でも過ぎたらだめだよ」


「いいですよ。
でも、もし行けたら私のこともうミジンコって呼ばないでくださいね」


「ああ、いいともさ。

でも、もし行けなかったら目の前の人よりネットの関係が信頼できるだなんて二度と口にするんじゃないよ」


「分かりました。約束します」

私は大きくうなづいた。