カリス姫の夏

藍人くんの身の上を、私はうらやましいというよりも同情した。


「そしたらさ、色々プレッシャーとかあるんじゃない。
一家で医者だと藍人くんも医者になれとか、圧力かかって」


藍人くんは行き交う人々をぼやっと見ながら

「うーん、うちは割と放任なんで、そういうプレッシャーはないんですけど……」

と、つぶやいてから続けた。


「でも、医学部は志望してます」


「えっ?!
医学部志望なの?!
本気⁈
じゃあ、うちの学校にきちゃあ……」


『だめじゃない』という言葉が口から出る前に、私の検索に一つの情報がヒットした。


「もっ……もしかして……
藍人くんって……
藍人くんのクラスって…て
とっ……特進……?」


「はい、特進Aです」

と藍人くんは、血液型でも答えるようにさらっと言った。


私の通う高校は、ちょーーど偏差値50の高校。まっ、その中でも私は底辺ですが。


でも、うちの学校には特別進学科というのが1学年2クラスあって、普通科とは全く学力の違う学生が集まっている。その中でもAクラスは東大、京大、医学部志望者だけを集めた雲の上の存在だ。


「藍人くんって特進Aだったの?
特進の学生って、普通科の人と話しちゃだめなんじゃないの?」


特進は、学校内でも別棟に教室があり、始業式などの儀式もクラスで受けるように免除されている。


部活にもたいてい入っていないので、特進の学生と接することは無く、ほぼ伝説のような噂話がまかり通っていた。私自身、本当は特進なんて無いんじゃないかって疑ったくらいだから。


その伝説の一つが『特進の学生はバカがうつるから普通科の学生と話すなと言われている』というもの。


藍人くんは優しくほほ笑んだ。

「そんなの嘘だよ」