カリス姫の夏


パッァァァーーーーーン。

私の中で破裂音がした。言いたいこと、本心を飲み込み続けいっぱいになった心の水風船が、限界を超えて割れ、はじけ飛んだ。


私の事をミジンコって言うのはまだいい。でも、私のネットワークを否定することは、私は存在そのものを否定するということ。それは、ずぇっっったいに許さない。


「大人は……大人は……」


絞り出すような私の声を聞こうと、吉元さんは前のめりになった。


「えっ?なによ。
はっきり言いな!」


私は振り返り、キッと吉元さんをにらみ返した。



「大人は何かあるとすぐネットのせいにするけど、じゃあイジメはネットが無い時には無かったんですか?
ネットが普及してない時だってイジメはあったし、人間関係が苦手な人だっていたでしょ。

ネット中毒って言うけど、時間ある時に同じことしてたら中毒なら、夏休み中朝から晩まで野球の練習してる野球部員は野球中毒ですか?
暇さえあれば韓ドラ見てるお母さんは韓ドラ中毒ですか?

ネットの人間関係は信用できないって言うなら、直接会ってる人は嘘つかないって保障はあるんですか?

むしろ直接会うからトラブルになるんじゃないですか?
直接会わなければ、嘘付かれたって傷つかないし損害もない。

そりゃ、デマが出回ったら困るけど、でも、吉元さんの時代だって、不幸の手紙とか口裂け女の噂話とかあったんでしょ。
情報の広がる手段が変わっただけで、やってる事は同じなんです。

ネットのおかげで出来ることも増えたし、世界も広がってるじゃないですか。


現実には一生知り合うことの無かった人達が集まって意見ぶつけ合えたり、
会話なんて絶対できない有名人からツイッターで返事もらえたり、
小説書くなんて夢みたいなこと出来て知らない人に読んでもらえて感想までもらえたり、
自分の歌動画でアップして聞いてもらえたり……

だいたい、パソコン作ったのもネット広げたのに大人だっていうのに。
何、今さらネットばっかり悪者にしてるんですか。

なんだかんだ言ったって、ネットの無い世界に逆戻りしようなんて大人だって言えないんでしょ!!」


こんなに長いこと人の目を見て話したのは久しぶりだった私は、一気にしゃべり終えるとハァハァと肩で息をした。口からもれる息は、思いを言いきった満足感で熱くなった。


「………」


吉元さんは何も言わないが、にらみ返す瞳には怖いほどの力がある。その視線に負けないよう、握り締めた両手に更に力をこめた。