カリス姫の夏


すると突然、予想外の激痛が足先に走った。


「イタッ」


下駄の鼻緒が足の指を痛みつけ、弱音が思わず口をつく。立ち止り、かがんで自分の足を見る私を、藍人くんは心配そうにのぞきこんだ。


「大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫、大丈夫。
お母さんったら、サンダルでいいって言ったのに浴衣には下駄だってゆずんなくて、買ってきちゃって……。
ここまで、歩いて来たから足痛くなっちゃった」

と、私は照れ笑いで言い訳した。


「歩いて来たんですか?
結構、距離ありますよね」


「うん、お父さんは送るって言ったんだけど……」


お父さんに送ってもらい藍人くんと一緒にいるところをまかり間違って見られでもしたら、家族どころかご近所中に言いふらされる。そして、最後にはお隣のインコのピーちゃんにまで伝わるに違いない。


車で送ると言い張るお父さんを振り切り、私はここまで歩いてきていた。


「ううん。
平気、平気」


せっかくのお祭り、誘ってくれたのに……

私はカラ元気で素顔を隠し、勢いよく階段を上った。


でも、あっという間に力尽き、足どりが重くなる。藍人くんはそんな私の歩調に合わせ、ゆっくりと歩いてくれた。