LAST SMILE




あたしが病室のドアを閉めたあと、
中からドンという鈍い音が聞こえた。






やめよう。


あたしが泣いちゃダメだ。


一番泣きたいのは、本人だもん。






スタジオで一人で、
歌おうと必死になっていたあのときも、



一人で苦しそうだった。




そのあとだって、
何もなかったかのように


明るく荒々しく振舞っていた。






どうして?





そう思うけど、
もうあたしはどうしてなんて聞かないよ。




だって、伝わってきてしまうから。



辛いって、


悲しいって、


本当は声に出して泣きたいんだって、





本人はそう思っていなくても、
体はそう悲鳴をあげていることくらい、



あたしにはわかる。




だから、
あたしは間違っても泣いちゃいけない。




あたしは涙が出るのを必死で堪えて、




時折聞こえる舌打ちや、
いらついた声が洩れるのを静かに聞いていた。