あたしが難しい顔をしていると、
祐兎が慌てたように言った。


「別に。最近、あっちに遊びにいったから最近はよく出るんだよ。
 地元の奴に“標準語とか似合わねぇ”とか言われたからつい・・」



ふーん。
別にいいけど、何でそんな必死こいて弁解?


うけるんですけど。


「ねぇ、4人で何話してんすかー?俺も混ぜてよー。
 てか、合わせないの?」


一人、蚊帳の外だった磯辺くんがぶーぶー言い始めたから、
あたしたちは準備にとりかかった。




「みんなに一つだけお願いがあるの」


あたしは意を決して言った。


他の4人が作業を止めてあたしを見る。


うー。
やばい。緊張する。


でも、言わなきゃ。



「少しでも不満だったりしたら、すぐにあたしを切って。
 これならまあいいか、とか、そのうちよくなるとか、
 妥協は一切したくないの」



みんなは何も言ったりしないで、
真剣になって聞いてくれた。




「だから、お願い。“Rees”の“REI”としてじゃなくて
 ・・・“Blue sky”の新メンバーの“REI”として
 ふさわしいか見て欲しいの」



あたしがいい終えると、
武田くんが困ったように言った。



「いいって、そんな責任感じなくても。
 もともと俺らがお願いしたんだし・・・」


「たけし。こいつの言うとおり、テストしてやろうぜ」


武田くんがあたしを宥める中、
亜貴がぽつりとそういった。


そうすると、みんな納得したように配置に付いた。


「よし。んじゃ、はじめるぞ」





祐兎がギターを鳴らす。


始まった。



練習したもん、大丈夫だよね?


亜貴と一緒に、頑張った。


Reesみたいな、コピバンみたいな
安っぽい偽者のバンドなんかじゃなくて、


本物の、
この人達のバンドのメンバーにふさわしくありたい。


悪いけどあたし、負けず嫌いなんだよね。



深く深呼吸し、あたしはベースの音を合図に歌い始めた。




みんな、聞いて。


あたしを。



あたし自身を。