歌い終わると、亜貴がよしっと小さく呟く。
「んじゃ、この歌詞、今度はこれつけて歌ってみ?」
「え?いきなり?」
「俺も一緒に歌うし」
亜貴が!?
てか、歌えるなら亜貴でもいいのに・・・。
そんな考えを急いで頭から追い出して、歌に集中した。
亜貴がブレスを取った。
(あ・・・)
亜貴が歌う。
昨日、あたしが勝手につけたメロディーにのせて。
覚えてるんだ。
あたしの作った出鱈目なメロディーを。
ていうか亜貴の歌、初めて聞いた。
こんなに、
こんなに上手いんだ。
「おい、何で俺だけ歌ってんだよ。恥ずいだろ」
「ご、ごめん!!」
亜貴の声に聞きほれてたなんて死んでも言えない。
あたしはすぐに謝って、歌詞カードに目をやった。
「次はちゃんとやれよ。もう歌ってやんねぇからな」
「うん」
亜貴は歌ってやんないっていったけど、
なんでか、歌ってくれる気がした。
だからかな?
自然と緊張はなくて、気付くとあたしは、
亜貴のベースに合わせて歌詞の通りに歌っていた。
この歌詞は、元気のない君を立ち上がらせる応援歌。
―元気を出して。君ならできる。
なんていう言葉はいらない。
俺に言えるのはただ一つ。
“俺がそばにいるから”―