気が付いたら、篤志が自分よりもずっと遠くを歩いている気がした。


そう感じ出したら大した夢も持たずにこの高校に入学した自分が恥ずかしくて、篤志の隣に居ることが惨めに思えたんだ。


どうせ隣に居たいと思っても、篤志とはクラスが離れてる。

どうせ篤志は部活で忙しいから、顔すら合わすチャンスもない。


そう自分に言い訳をして、篤志との間に出来た溝を見ないフリしてきた。



……でも、無理だったんだよ。


やっぱり、篤志とはずっと一緒に居たかった。

そう思ったら、自分の気持ちが素直に口から出た。



『好きなの』



瞼を閉じて唇を強く噛み締めれば、数日前に言った自分の言葉が蘇ってくる。


何の前触れもなく、率直に気持ちだけを伝えるシンプルな言葉を言ったんだ。


脳裏に浮かんだ篤志の驚いた顔が、そろりそろりと静かに胸を締め付けた。


好きなの、ともう一度繰り返したあたしに、篤志は戸惑った様子で笑っていた気がする。



『……少し、考えさせて』



保留された返事。

そして今日、篤志は話があると言ってあたしを引き止めた。


その二つが異なっているとは、どうしても思えない。


篤志は、あたしの告白への返事を決めた。

今朝あたしを引き止めた篤志の真顔が、その証拠だった。