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「幼馴染みってさ、いつまで一緒に居られるんだろうね?」



小学生の頃、篤志(あつし)と初めてクラスが別々になった、春の日の帰り道。

ふとそんなことが気になって聞いたことがある。


あたしの家のお向かいに住んでいる幼馴染み――篤志は、迷うことなく自信を持って言った。



「一緒に居ようと思う限り、ずっと一緒に居るんじゃない?」



その頃はあたしよりも視線が下にあって、ランドセルに背負われている感じの細身で頼りない感じだった篤志。


そんな小さな男の子の口から飛び出したとは思えないほど、その声は大人びて聞こえた。


いつも側にいる篤志が、いつか遠くに行ってしまうかもしれない。

そんな想像をして一日中うじうじ悩んでいたあたしには、芯が通っていて迷いのないその言葉が、とても特別なもののように聞こえたんだ。


真っ直ぐあたしの心の奥にまで届いたそれは、まるで魔法の言葉のようで。

悩んでいたことが、しょうもないちっぽけなものに見えたぐらいだ。



「……そっかー。そうだよね! 一緒に居ようと思ってれば、一緒に居られるもんね!」



そう口にすれば、スーッと心が軽くなった。


見上げた春の空がとても清々しく見えたことは、今でもよく覚えてる。

隣で自信満々の笑顔を浮かべていた篤志の顔も、はっきりと。