「――片思い卒業証書」
二人きりの教室の空気を、篤志の力強い声が揺らした。
篤志の行動にうんざりし始めていたあたしも、さすがにその単語にハッとさせられる。
驚いて何か言おうとしたけど、それは続けられた篤志の言葉によって塞がれた。
「本郷彩愛。あなたは18年間、山本篤志の幼馴染みとして、ときには良き理解者として、常に側に居てくれました。その頑張りに感謝の意を込めて称します。またあなたは山本篤志に恋愛感情があり、その感情は山本篤志が本郷彩愛に抱いているものと一致します。よってあなたは山本篤志への片思いの期間を終えたことになり、片思いを卒業することをここに証明します。そしてその努力を認め、この片思い卒業証書を授与します」
“片思い卒業証書”に書かれているであろう文章を、篤志は時々言葉を詰まらせながらも丁寧に読み上げた。
そして画用紙はあたしに差し出される。
それはまさに今日受け取った卒業証書を授与するときの流れと同じで、篤志は緊張した表情であたしが受け取るのを待っていた。
「どうしてこんな……、変わったことするのよ」
皮肉っぽくそう言いながらも、躊躇いがちに画用紙に両手を伸ばして掴む。
言葉のわりに声は嬉しさで震えていて、少しでも気を緩めてしまえば泣いてしまいそうだった。



