「ちょっとさ、教壇の前に来てくれる?」
「えっ……?」
「ほら、早く」
一体何が始まるのだろうと戸惑っているあたしの手を引いて立ち上がらせると、篤志は教室の前方中心にある教壇に歩み寄った。
そしてあたしを教壇にある机の前に立たせると、自分は机の黒板側に動いた。
自然と机を挟んで、篤志と向き合う形になる。
「彩愛、そこに立ったまま目閉じてろ」
「え?」
「ほら、さっさと言うこと聞いて」
……意味が分からない。
てっきり告白の返事をしてくれるのかと思ってたけど、まさかあたしの思い違いだったりするの?
たとえそうだとしても、教壇の前に立たされるこの行動は意味が理解出来ない。
言うことを聞かずに首を傾げると、むっとした表情で見られた。
「言うことを聞け」と言うようなオーラが、篤志の周りを漂っている気がする。
一度何かを言い張ると、絶対に自分の意思を曲げない篤志のことだ。
きっと今あたしが何を言っても、目を閉じるまでは何も話してくれないのだろう。
小さく溜め息を吐いて観念した。
「……分かった。これでいい?」
「そうそう。俺が良いって言うまで、絶対に目開けるなよ?」
目を瞑るとふわりと空気が動いて、篤志が動いたのが分かった。



