そして最後に締めくくられたのは、


「徳力の歴史においてここ数年の間、
 神がお怒りになられているのかこのような儀式が頻発しています。

 このような儀式が数年の間に、立て続けに繰り返されることなど
 本来ならあってはならないのです。

 ですが、民が苦しみを感じた時、自らに戒めを与えて
 天に還られるのが、生神の役割。

 それもまた、遠い古より、神のご意志による約定なのです。
 
 ご当主の、お母上様も、お父上様も見事に、その役目を果たし
 民を今日まで守り続けて参りました。

 その役割から逃げ出した、神に意に背いた裏切り者が
 早城飛翔。

 一族は彼の存在を受け入れません。

 ご当主、私もまだ小さいご当主にこのような重き役目を押し付けるのは
 心苦しいのです。

 ですが、君が立派にその役割を果たされることは、
 神になられたお父上様、お母上様にとっても誇りとなられるでしょう。


 ここ数日の間は、儀式を行うには日が悪く
 今だ見定められてはありません。

 日が確定いたしましたら、総本家より正式に迎えの者が参ります」




康清は最後まで言葉を紡いだ後、深々とお辞儀をして
部屋をまた後にする。





依頼した通り、新しく用意された神水。




神水を再び、コップ一杯飲み干して
そのまま布団の中へと、その身をしずめた。





民を守ることが……村人を守ることが
当主としての務めで、父の望みなら……ボクは
ボク自身の意志で、それを成し遂げたい。





それを邪魔をするアイツは……
ボク自身が拒絶する。





こんなにも黒い雨が心に中に蠢くのは
初めての感覚だった。