須王依子がある日、外出から帰宅して自宅で倒れているところを
父親が発見。
原因不明で眠りっぱなしなのだと言うこと。
「華月、柊と連絡はとれるか?」
「今、確認いたします」
そのままファイルを更に読み進めると、
そこには、譲原咲が消えた情報と先の母親のことが綴られていた。
咲の母親が住む住所を、携帯電話に打ち込んで地図を調べる。
「ご当主、柊佳殿は今は八城【やつしろ】にいらっしゃるそうです」
「八城?
咲の両親の家の近くだな」
今調べたばかりの住所を辿る。
「柊と桜瑛に18時に八城で合流したいと連絡を頼む。
調査資料を開示して、お互いの意見を聞きたい」
「お伝えします。
さっ、ご当主。夜からお務めになるのでしたら、
今はご無理は行けませんわ。
一族への代行は私共が。
ご当主は、もう暫くお部屋でお休みください」
「万葉、夕方鷹宮まで車を出せ」
「はいっ。ご当主」
万葉はそう言うと、深々とボクに頭を下げる。
再び自室に戻ったボクは、
先ほどと同じように、精神を集中して何度も何度も
鬼の軌跡を辿ろうと試みる。
何度も何度も挑戦するものの、上手く行かなくて
ふと、ベッドで力を抜いて眠りについたその時、
不思議な感覚がボクをあの世界へと連れて行く。
★
見知らぬ世界の中、
鬼は消えた女の子を必死に守ってた。
消えた女の子の傍には、
鬼の存在を知る、もう一人の鬼。
その鬼と少女の傍から、逃げ出すように
去って行く鬼。
*
……ボクの血はもう赤く染まっている。
その罪は親友を殺したその日から消えることはない。
だったら……咲を悲しませる存在をボクは今一度……
★
そんな意識が流れ込んできて慌てて飛び起きる。
何時の間にか、ベッドサイドの時計は16時30を告げる。
あの鬼は……あの咲の母親を手にかけるのか?
何となくそんな風に思ってしまった想いは、
簡単に消せるものではなくて、
ボクは慌ててベッドから飛び起きてリビングへと向かった。
「華月、万葉、今すぐ鷹宮まで車を出せ。
柊と桜瑛にも、譲原咲のの母親の自宅へと向かわせろ。
後、鷹宮の飛翔にすぐに連絡をとれ。
アイツも一緒に連れて行く」
声を荒げて姿を見せるボクに、
驚いたように華月と万葉対応する。
「時間がないんだ。
早くしなきゃ、間に合わなくなる。
今のボクだけじゃ、あの者たちを助けられない」
そうやって叫ぶと、二人はすぐにボクが動きやすいように準備してくれる。
鷹宮までは万葉の運転で向かって、
鷹宮で職場まで入っていって、飛翔を見つけると、
そのまま白衣姿のアイツの手をひいて院内から連れ出す。