【テーマパーク2】



湯浅「………」


美弥「あぁぁあ……絶望だぁ……」


湯浅「どうしてこの広いテーマパーク内で、こんなにもピンポイントで会いたくない人に会ってしまうのかがすごく不思議だ……」


美弥「あ……! キリちゃん……!? そこにいるのはキリちゃんかい!?」


湯浅「だから俺は湯浅 桐生……」


美弥「キリちゃんどうしよう~……」


湯浅「……はぁ、どうしたんだ」


美弥「あのね、トイレにね、行きたいんだけどね。もらった地図の見方が分からなくて、トイレにたどり着けないくて……係員さんに地図の見方を聞いたけど、喉渇いてジュース飲んでるうちに忘れてしまった」


湯浅「………ホテルの件にしろこの件にしろ、方向音痴以前の問題だな」


美弥「みゃーこのままじゃ、この浮かれる大勢のお客様がいる中で世紀の大失態をしてしまう……」


湯浅「……トイレに行きたいんだろ、ったく。こっちだ、立てるか?」


美弥「……うん」







美弥「スッキリした! キリちゃんのおかげで、人間としての誇りを失わずに済んで良かったよお!」


湯浅「それは良かったな……じゃあ俺はこれで」


美弥「ところで、キリちゃん1人なの?」


湯浅「別に……アトラクションなどにはあまり興味がないから。こうしてお前みたいに困ってる生徒がいないか見回りしてる」


美弥「えー、せっかくの修学旅行なのにもったいないよお」


湯浅「別にいいだろう。お前……小花さんこそ、あんなところに居たが友達とかは?」


美弥「えー、みゃーは1人だよお」


湯浅「えっ……その、もしかして……いじめ……とか」


美弥「あはは、そういうのじゃないない! なんでキリちゃんがそんな不安そうな顔してるの!」


湯浅「だって……まさか自分のクラスにいじめがあったなんて……それに気付かなかった俺は……」


美弥「だから、いじめじゃないの! 美弥にいじわるする人いないもん!」


湯浅「でも、1人なんだろう……?」


美弥「……みゃーはね、男の子に媚びてるんだって」


湯浅「そうなのか……?」


美弥「えー、知らなぁい。みゃーは媚びてるつもりないし、こんなアホなみゃーに構ってくれるなら男の子でも女の子でも嬉しいよ」


湯浅「…………」


美弥「でも、自分が思ってる自分と周りからの見え方は違うから」


湯浅「まぁ……そうだな」


美弥「当たり前だよねー、お互いに思ってることをいちいち全部伝え合ってる訳じゃないんだから。そうなってもおかしくないでしょ」


湯浅「……うん」


美弥「それに、みゃーはアホの子だから、周りの子達みたいに集団で集まって、その中で一番強い人のご機嫌とって、外されないように周りに合わせてって……そういうの上手にできないの」


湯浅「しかし全部が全部、そういう人達なわけではないだろう?」


美弥「それはもちろん。こんなアホなみゃーでも、優しくしてくれる人は居るよ! キリちゃんみたいに!」


湯浅「お、俺は……」


美弥「だからいーのいーの、1人でも。みゃーは楽しいから!」


湯浅「……そう、か」


美弥「せっかくこういうとこいるのに、暗い話になったね! 変なの~! キリちゃんありがとう、みゃーまだなんにも乗ってないからそろそろ行くね!」


湯浅「……ま、待て!」


美弥「……?」


湯浅「……やっぱり、せっかく両親が働いて出してくれたお金でこういうところに来てることだし……少しくらい、俺も楽しんでみた方がいいのかもしれない」


美弥「えーなになに、話が固くて難しいからみゃーにはちょっと分からないよお」


湯浅「……俺も、い、一緒に行くと言ってるんだ」


美弥「えー! 本当に? みゃーアホの子だけど、一緒に回ってくれるのー?」


湯浅「別に小花さんのためじゃないからな。同情してるわけじゃない、君は俺が思っていたよりも……すごく強い人だ」


美弥「あはは、みゃープロレスラーとかなれちゃうのかな!」


湯浅「(その強いじゃないよって……説明しても、どうせ分からないだろうなこの人は)」


美弥「キリちゃんあれ乗ろうよ! ギャンギャンするやつ!」


湯浅「ギャンギャンだと……!? そんな恐ろしい効果音のアトラクションがあるのか……」


美弥「おー! いっちゃうよー! ギャンギャンしちゃうよー!」


湯浅「そうなのか……少し甘く見ていたな(テーマパークも。アホな君も)」