【保健室】



七世「失礼しまーす」


湯浅「……あ」


七世「あ、えーと……会長さん」


湯浅「どーも」


七世「どーも。あれ? 保健の先生は……」


湯浅「たった今、少し用事があると職員室に出てしまった」


七世「そー。会長さんは? 顔色悪いね」


湯浅「あ、あぁ……ちょっと貧血でくらりと」


七世「もしかして身体弱い? 細いし、白いし……血とか……あります?」


湯浅「さ、さすがに血はちゃんとかよってるよ
……!!」


七世「はは、冗談す。先生来ないなら適当に棚とか漁っとこ」


湯浅「そんな、勝手に触ったらダメじゃないのか」


七世「大丈夫大丈夫。バレないようにやるから」


湯浅「あ……そうか。それならいい……いや、
良くないだろ!」


七世「大丈夫です。会長さんが黙っててくれれば」


湯浅「生徒会長に黙秘しろと……」


七世「だって、急がないと泣くからなあ。あいつ」


湯浅「あいつ?」


七世「三門 春太。覚えてます?」


湯浅「……覚えてなくとも、知っている」


七世「…………え、好きとか?」


湯浅「どうしてそうなった!? しかもすごく引いてる……!! その顔やめてくれ……!! 違うよ……藤咲さんが、よく彼の話をしているから」


七世「あー……桜子が」


湯浅「ほぼ愚痴だが」


七世「はは、だいたい想像できる」


湯浅「それでも彼女は……いつも嬉しそうだ。君らの……御門くんの話をするときは特に」


七世「……会長さんは……好きですか? 桜子」


湯浅「答えないとダメか?」


七世「別に。聞く権利も答える義務も無いですけど」


湯浅「俺は……好きだよ。でもそれは恋愛感情とかじゃなくて、藤咲さんの優しさが好きだ」


七世「優しさ?」


湯浅「彼女が優しいから、俺は生徒会長になれたんだ」


七世「へぇ………あ、あった」


湯浅「……?」


七世「バンソーコー」


湯浅「それを探してたのか」


七世「紙で切っただけなのに、騒ぐからあいつ。なんて、保健室ってこじつけて授業サボろうと思っただけなんだけどね」


湯浅「そ、それは良くない……!」


七世「そーすね。うちの学級委員長がうるさいんで、大人しくこれ持って戻ります」


湯浅「…………」


七世「会長さんが優しいから、桜子も優しいんじゃない?」


湯浅「……え?」


七世「棚勝手に漁ったの、黙秘してくれるんでしょ」


湯浅「………俺は具合が悪かったから、ずっとベッドで寝てた……何も見ていないよ」


七世「ほら、優しい」


湯浅「うるさいな……先生が来る前に早く戻れ」


七世「……はーい」