【幼なじみ】



鈴木「あー」


湯浅「……なにか」


鈴木「聞いたよお、桐生くん生徒会長になったんでしょー」


湯浅「あぁ、うん」


鈴木「すごいねぇ、かっこいいねぇ」


湯浅「褒めてるのかそれは」


鈴木「もちろん。だって幼なじみだもん」


湯浅「幼なじみであるかどうかは関係ないと思う」


鈴木「わたしが国家権力を握るくらいの存在になったら、桐生くんだって嬉しいでしょう。それと同じ感じ」


湯浅「嬉しいというか複雑だな……君に国家を任せていいものなのか……」


鈴木「バリバリ任せて大丈夫だよ。ほら、わたし平和とか好きだし」


湯浅「……なんというか、相変わらずだな」


鈴木「褒めてる?」


湯浅「……褒めてる」


鈴木「そう。あ、お菓子どうぞ」


湯浅「ありがとう。だが休み時間が終わったらちゃんと閉まっておけよ」


鈴木「真面目だなぁ」


湯浅「というか、なんでこんなところに居るんだ。男子トイレの前だぞここ」


鈴木「なんか変なのから逃げてる」


湯浅「変なの……?」


鈴木「……桐生くんの幼なじみ」


湯浅「俺の幼なじみはお前の幼なじみだろ。あいつか、雅か。あいつまだお前のこと付け回してるのか」


鈴木「わたしのこと桐生くんと勘違いしてるんじゃないのかなあ……。わたし、ストーカーされる覚えがないもん」


湯浅「俺もないし、もし本当にそうだったら色々と抱えきれない問題が生じる」


鈴木「わたしもね、大変なの」


湯浅「深刻そうな顔してるけど普通にお菓子食ってるからな、バリバリ聞こえてるからな、食べカスこぼれてるからな」


鈴木「幼なじみが片や真面目で堅物すぎる生徒会長」


湯浅「……堅物すぎて悪かったな」


鈴木「片やどうしようもないストーカーの不良……変なのはどっちか片方で充分だよお」


湯浅「言っておくけど、それを俺に当てはめると俺の幼なじみは片やどうしようもないストーカーの不良で、もう片やどうしようもない虫好きコレクターの能天気女だからな」


鈴木「ひ、ひどい……桐生くんわたしのことそんな風に」


湯浅「たぶん俺じゃなくても思ってるよ」


鈴木「またまた」


湯浅「1つ褒めるならそういうとこ能天気で良かったな、本当に」


鈴木「褒めていただいた」


湯浅「そろそろ予鈴なるから教室戻れよ」


鈴木「はいはい」


湯浅「あと……あんまり冷たくしてやるな」


鈴木「?」


湯浅「腐っても幼なじみだからな」


鈴木「なんのこと?」


湯浅「どうしようもない馬鹿のこと」