【トンボ】



鈴木「トンボ~が飛んで~るね~死ぬま~で空の上~」


真白「なにその歌」


鈴木「作詞・作曲 鈴木 蓮」


真白「自分で作ったってことね」


鈴木「中原くんはトンボ好き?」


真白「え? うーん……好きとか嫌いとか言われてもなあ……虫だし」


鈴木「わたし、トンボは好きじゃない」


真白「え、そうなの? 虫ならなんでも好きだと思ってた」


鈴木「トンボは噛むから」


真白「あぁ、あれ意外と痛いよね。指の皮むけるし」


鈴木「でも捕まえるのは楽しいから好きなの。昔ね、よく捕まえてた」


真白「あー、俺もよく虫取りあみで捕まえてたよ」


鈴木「それでね、捕まえたトンボの羽をもう逃げられないようにもいでたの」


真白「ヒィッ!」


鈴木「羽が無くなったら、どこにも行かないから。ずっと遊んでられるもの」


真白「なんていうか……鈴木らしいね」


鈴木「でも今思えば意地悪だったよね。あの時羽をもいだトンボは、もう二度とあの空を飛べなくなるんだもの」


真白「…………」


鈴木「きっと、空を飛んでいた家族にも会えなくなっちゃった」


真白「まぁ……子供の頃の話だし」


鈴木「だから嫌われてるのね、最近トンボを捕まえようとしてもすぐに逃げられちゃう」


真白「捕まえてどうするつもりだったの?」


鈴木「間宮くんに見せに行く」


真白「……あ、はは。それはやめた方がいいかな」


鈴木「それで、トンボにごめんなさいってあの時のこと……謝って。また空に還すの」


真白「……そっか」


鈴木「嫌われてるんじゃ、しょうがないけどね」


真白「………あ、そうでもないんじゃない?」


鈴木「?」


真白「頭の上、仲直りしに来たみたいだよ」


鈴木「ふふ、本当? じゃあこのまま間宮くんに見せに行こうかな」


真白「あんまり怒らせちゃダメだよ」


鈴木「大丈夫。愛のある嫌がらせだから」


真白「……本当、変わってるなあ」