【ダイエット】



鈴木「太った……」


桐生「…………」


鈴木「桐生くん、わたし太ったの」


桐生「だとして、なぜそれをいちいち俺に報告しに生徒会室まで……」


鈴木「……知りたいかなって」


桐生「知りたいか知りたくないかで聞かれたら、正直どうでもいい」


鈴木「きっと最近運動してないからだ……」


桐生「お前、強要される以外で運動したことあるのかよ」


鈴木「……ない」


桐生「それに、だいたい太ってないだろう。華奢な手足して」


鈴木「やだー、桐生くんがわたしのことを性的な目で見てくるー」


桐生「じゃ、じゃあなんて言えばいいんだよ!」


鈴木「……"な、なめらかでいい具合の身体付きだね"」


桐生「そっちの方がかなりいやらしい言い回しじゃないか……」


鈴木「この前桐生くんが家にみかん持ってくるからだー!」


桐生「お前喜んでたじゃん」


鈴木「嬉しかったよ、そうだよ、嬉しくてあれ1日で全部食べたんだよ」


桐生「10個くらい入れたぞあれ……」


鈴木「しかも常に雅くんがわたしのところに甘いものを持ってくる……」


桐生「お前のこと餌付けでもしようとしてるんじゃないのか」


鈴木「わたしは鳩かー!」


桐生「せめて犬か猫に例えろよ……」


鈴木「ねぇ、桐生くん……」


桐生「忙しいんだけどな、俺。そろそろ藤咲さんも来るし」


鈴木「わたしがもし、お相撲さんになっても幼なじみでいてくれる?」


桐生「例え相撲取りになっても幼なじみは幼なじみだからな……」


鈴木「今度から口ぐせが"どすこい"になっても、嫌がらないでくれる?」


桐生「……それは、嫌だし……言わなきゃいい話だろ……」


鈴木「相撲部屋には何歳から入れるんだろう……」


桐生「情報室の鍵貸すから、ネットで調べてくれば」


鈴木「最初は下積みからだよね。友達できるかな……ルームメイトと仲良くできるかな。わたし馴染めるかな……?」


桐生「どんだけ話進んでんだよ……だから、太ってないって」


鈴木「桐生くんは細いからそんなこと言えるんだよ……昔から骨だもんね……筋肉とかないし」


桐生「……さらっと失礼だな、君」


鈴木「一昨日から太った罪悪感でお肉とソーセージが食べれないの……共食いって犯罪だよね」


桐生「もういい加減めんどくさいんだけども……」


鈴木「テレビで豚とか牛を見ると、なんか言いようのない仲間意識が芽生えてくる……」


桐生「だいたいなんで太ったと思ったの? 体重増えたから?」


鈴木「体重は増えてない……」


桐生「じゃ、じゃあ太ってないんじゃ……」


鈴木「最近セーターがキツいの……1週間くらい前までは普通だったのに……」


桐生「あのさ……それ、洗濯したセーターが縮んだとかじゃないの?」


鈴木「………っは」


桐生「ほら、絶対そうだろ。今、そういえば洗濯したわ的な心当たりのある顔してたでしょ」


鈴木「……ち、ちがうし」


桐生「ここまできてシラを切る意味が分からない……」


鈴木「せ、洗濯とかしてないし……」


桐生「それはそれで嫌なんだけど……」


鈴木「そういえばわたしあんまり太らない体質だった」


桐生「…………」


鈴木「またみかんよろしくね」


桐生「なんだったんだよ。俺の昼休みを返せ……」