【タイツ】



桐生「……生徒玄関で何してるの小花さん。もうすぐ朝のホームルーム始まっちゃうよ」


美弥「……っ……ぅ」


桐生「えっ!? 泣いてるの!?」


美弥「ぅー……」


桐生「ど、どうしたの!? しゃがんでるけどどっか痛い? それとも誰かに何か言われた?」


美弥「あのね、あのねキリちゃん……」


桐生「うん、ゆっくりでいいよ」


美弥「……っう、タ……タイツ」


桐生「……タイツ?」


美弥「タイツがね、伝線したあ……」


桐生「……は?」


美弥「こっ、転んだら……タイツが伝線したあああ!」


桐生「えっ!? ちょっ……黙って! 恥ずかしいからそんなことで泣き叫ばないで!」


美弥「うわあああ! キリちゃんまでもが、タイツの伝線したみゃーを恥ずかしいと! そうやって突き放そうとしてるううう! みゃーは日本の恥だあああ!」


桐生「してないから……! 日本とかそんな大規模な問題じゃないし……! ここで泣かれると人目がやばいから!!」


美弥「キリちゃんにはこの悲しみが分からないでしょうよ!」


桐生「でしょうね、俺タイツとか履きませんから」


美弥「嘘つきいいい! よく履いてるじゃんんん!!」


生徒達「「「(……!?)」」」


桐生「はっ、履いてないよ……!? 誰と間違ってるの小花さん!?」


美弥「だ、だって……時々ニーハイも履くってえええ!!」


生徒「「「(……ザワザワ)」」」


桐生「やめてくれえええ! 仮にも生徒会長なのに、これ以上あらぬ誤解を広めないでくれ……!!」


美弥「でも一番はハイソだって……」


生徒「「「(……まじかよ)」」」


桐生「もう……頼むから俺を変態にするのはやめて……」


美弥「……っ……泣き叫んだら、ちょっと……落ち着いた……」


桐生「散々してそれか。俺の方が泣き叫びたい……」


美弥「キリちゃん替えのタイツ持ってる?」


桐生「持ってるわけ無いだろ」


美弥「じゃあ、はるるんに借りに行くからついて来て」


桐生「……三門くんももってないと思うよ」


美弥「またそうやってぇ、みゃーにいじわるするんだ……っう」


桐生「わ、分かった……! 俺が悪かった! 頼むからもう泣かないでくれ!」


美弥「……じゃあ、はるるんきっとタイツ持ってるよね?」


桐生「あぁ、三門くんは絶対にタイツの替え持ってるから! 三門くんは! 女子のタイツを! 持っている!」


春太「……!?」


桜子「え……」


桐生「あ、三門くん……すまないが小花さんにタイツの替えを貸してあげてくれ」


春太「……はい!?」


桜子「あ、あんた……タイツ持ってんの!? ひくわぁ……」


春太「えっ……!?」


桜子「最低……キモ……」


春太「なんの話……!? 俺今ただ登校してきただけなんだけど……!?」


真白「おはよー! なになに? みんなどうしたの、生徒玄関で」


桜子「……春太が……女子のタイツ常備してるんだって」


春太「えっ……いや……ちが」


真白「……軽蔑した」


桜子「あんたこれ以上失うものは何もないとこまできてるわよ……先に行きましょう」


春太「えぇぇ! 俺何もしてないのに……!!」