【虫にされたプロポーズ】



男の子「……ねぇ、服きたなくなるよ」


女の子「……わたし?」


男の子「せっかくかわいい服着てるのに、なんで砂場にすわってるの?」


女の子「さっきここにバッタがいたの」


男の子「……虫、好きなの?」


女の子「好きじゃないよ」


男の子「じゃあなんで?」


女の子「虫しかお友だちがいないから」


男の子「……自分の小学校にいるでしょ、友だちとか」


女の子「いないよ。はすは、虫ばっかりさわってるから小学校の女の子みんな気持ちわるがるの」


男の子「じゃあ、やめたらいいのに」


女の子「だれかと一緒にいるために、自分のしたいことをガマンするのはイヤ」


男の子「あっそ。おれの小学校女の子たちはおままごととかよくやってるよ。キミはしないの?」


女の子「じゃあ一緒にやってくれる?」


男の子「……いいけど、虫は持ってこないでね。服きれいにしてあげるから、こっちおいでよ」


女の子「……うん」






男の子「ただいま」


女の子「おかえりなさい」


男の子「つかれたー」


女の子「おつかれー」


男の子「…………」


女の子「…………」


男の子「もしかして、おままごととかやったことない?」


女の子「うん。だからどうすればいいのか、分からない」


男の子「適当に、おれの奥さんになりきってやればいいんだよ」


女の子「えっ、はすは奥さんなの? けっこんしてるの?」


男の子「まぁ……おままごとだし」


女の子「でもまだプロポーズしてもらってないよ」


男の子「おままごとにそんなリアリティ求めてないから」


女の子「えー……そういうもの?」


男の子「そういうもの」


女の子「そっか……」


男の子「………そんなに落ち込むなら、してあげるけど」


女の子「本当? じゃあ、して」


男の子「なんかヘンなの。まだ2年生なのに」


女の子「おままごとなんでしょ?」


男の子「はいはい」


女の子「ではお願いします」


男の子「あ……なまえ、わかんないから呼べない」


女の子「はすは、はすだよ」


男の子「……そう。おれは……」


女の子「あ! ナナ……」


男の子「えっ!」


女の子「……ナナホシテントウ! 髪、とまってるよ」


男の子「あぁ……本当だ(なまえ……教えてないのによばれたのかと思った。びっくりした……)」


女の子「ビクッてしたね」


男の子「急になまえ呼ぶから……」


女の子「え? よんでないよ」


男の子「……な、なんでもない」


女の子「あぁなるほど。では、ナナホシテントウくん、プロポーズお願いします」


男の子「なんだよそれ……まぁ、いいや」


女の子「ふふ」


男の子「……おれとけっこんしてください、はすさん」


女の子「はい、ナナホシテントウくん」


男の子「だから違うって……」


女の子「えー、なにが?」


男の子「……なんでもない。あげるよ、髪についてたナナホシテントウ」


女の子「あはは、はすの旦那さんだ~」


男の子「どうぞお幸せに」


女の子「ありがとう」