Candy of Magic !! 【完】




「か、勘当?!なんでですかっ。あの時計屋さんですよね?」

「あの時計屋さん、だな……親やそこの職人からはてっきり俺が跡を継ぐと思われていてな……教師になってガラス細工をやるっつったら親父から追い出された」

「そんな……それぐらいで勘当だなんて」

「跡継ぎ問題はそれぐらいで勘当になるほど重要なんだ。俺は一人っ子だし親父もそろそろ引退する時期だしな。不運に不運が重なって親父が激怒したんだ。だから……俺も同行させてくれませんか」

「まあ……そう言うことなら断る理由はないけど……本当にいいのか?ほとぼりが冷めているかもしれないぞ」

「それでも俺は職人になるつもりはないので、会ってぬか喜びさせるのもそれはまた怒られる理由になりかねません」

「……うん。わかった。アランは自分を貫き通すことにしたんだな。それが親の望まない道だとしても」

「はい」



正直言って、跡継ぎとか勘当とかは縁のない言葉だけど、先輩にとっては大事な問題だということは表情と背筋の通った姿勢を見ればわかる。確かに時計職人になるはずだと思っていた息子がそれにはならずに教師になると言って来た。しかもその学校でガラス細工を続けるという。

職人の暇潰しみたいなものを自ら選んで、用意されている道をわざわざ通らないと言われれば怒るのも無理はない。真っ平らな道ではなく、いばら道を息子が選ぶとは当然思っていなかった両親や周りの人。

でも、先輩は賢い人だからいばら道ではないのかもしれない。逆に職人になることが先輩に取っては苦の選択となり、それを放棄して勘当されることになっていたかもしれない。

……これじゃどちらにしろ勘当されることになってるけど、勘当されるならいっそ自分が納得した上で潔く勘当されたいものだ。


それらのことは、アラン先輩らしい将来の展望だと思う。



「勘当……変な人ですね。わざわざ進んで親の雷を受けるなんて」

「おまえも体験するかもしれないぞ。スリザーク家の息子だろ?親の決めた嫁を貰うことになるかもしれない」

「あー……その可能性あるかも。じいちゃんヤトのこと気に入ってるし。それに父さんも少なからず責任を感じてるだろうから相応しいお嫁さん探し出すかもね。それか逆に自由にしてくれるかのどちらかだろうね」

「……」

「残念だったな。皆、親の束縛を感じるときがある」




親の束縛か……お父さんの障害は束縛の内に入るのかな?偏見とか?

でも、私はそんなの気にしない。お父さんはお父さんだし。世界に父親はひとりしかいないんだから、お父さんの要望にはなるべく答えてあげたいって思うもん。

アラン先輩のお父さんだって、世界でひとりしかいない息子が自分のもとから離れて働くっていきなり言ったから怒ったのかもしれない。心の準備ができていなかったときの不意討ちはかなり堪(こた)えるはずだ。


愛情をこれ以上注ぐことができないってわかったから、その現実を受け入れ難くて先輩にキツくあたってしまったんだ。