愛車のシルエイティーを
転がして無茶苦茶に走った。


とりあえず
あの場所から離れたかった。


携帯の電源も切り、
ただ愛車で
走り続けて
辿りついた場所。


気がついたら、オレは、
初めてアイツと出会った公園に居た。




『バカやってんじゃねぇよ』




アイツはボロボロで
雑巾みてぇに
ぶっ倒れてて、
オレはアイツを助けた。



あれ以来、アイツが
オレの中から
消えたことなんて一度もない。

おふくろが亡くなった後も
アイツはただ
何も言わずオレの傍にいた。


ただ傍に居て、
オレにアイツの存在を
感じさせてくれた。


そんなアイツらしさが
……たまらなく愛しくて、
そのなかに埋もれてしまったら
もう二度と歩き出せない気がした。




だから裏切ったんだ。



アイツを一番、
苦しめることを
知りながら・・・
オレは裏切った。



もう会うことは
ないと思ってた。



合わせる顔なんて
ないと思ってた。



なのに……なのにアイツは
オレの元に戻ってきて……
一部のように
オレの中に入ってきた。

六年前と
何も変わらないままに……。


ただあの頃と違ったことは、
オレはレジデントで
アイツは患者で。


アイツの人生の終点が
目前に迫っている事実。



動転して乗せられて
全てを準備なく、
暴露した未熟なオレ自身。