アイツに向かって、
黙って手を伸ばすと
嵩継は箱ごと俺の掌へと放り投げた。


箱から一本抜き取って、咥えると
アイツがライターを
近づけて火をつける。





無言でただ夜風を感じながら、
煙草を吸って、空を見上げる。






「なぁ、嵩継。

 焼肉でもするか……」

「あぁ」





俺の言葉に対して、
返事はするものの
今もボーっとしている
時間の方が多い嵩継。






俺がここに居るから……。





俺はアイツを
苦しめるだけの存在なのか?








骨肉腫になって、
死ぬのを待つだけの日々。





その時間、金もかかるし
おふくろも、アイツのことも
苦しめることしかできない
それだけの存在なら……俺は……。








ふと心の中に目覚めた負の感情。





闇は広がって、
俺自身の未来を
真っ黒に染めていく。








アイツを……
苦しめるだけの存在なら
俺なんて……いらない……。










ふと病院内に近づいてくる
救急車のサイレンの音。





フェンスに持たれて、
ボーっとしていた嵩継が
我に返ったように、白衣を手に取る。