屋上からラスボスたちに連れられて
自分の病室に戻った俺は、
看護師たちにこっぴどく叱られた。



俺に無断告知をしたアイツは、
夜中になって、
ゆっくりと部屋に入ってきた。




「海斗……」




俺の名前を紡ぎながら
入室してきたアイツは、
ベッドサイドの丸椅子に
両手をつきながら座った。





病室内に響くのは、
アイツの溜息。




「って、お前さ……
 何やってんの?」




溜まらず、
静まり返った病室に声を響かせる。





「起こしたか……」




嵩継は、小さく呟くと
また黙ったまま、ため息を漏らす。




疲労感たっぷりの、
憔悴しきった嵩継の顔。





俺が……コイツに、
こんな表情をさせてんのか?




そう思ったら、
胸が締め付けられそうになる。






「海斗……。

 オレは……お前に生きて欲しい。

 抗がん剤でもなんでも、
 出来そうなものは片っ端からやってみて
 生きる可能性を広げたい。

 けど……それはオレの我儘だよな。

 勝手な言い分だよな。


 だから……
 無理強いはしない」






辛そうに
紡ぎだす嵩継の横顔。






「お前……
 オレに告知して、絞られたんだろ。

 病院、大丈夫かよ。
 研修、続けられんのか?」





そう問い直した俺に、
アイツは俺の額にデコピン一発。





昔から……
アイツは変わらない。




肝心なことは
何一つ言葉で言わないくせに、
その身一つに閉じ込めて、
代わりにデコピンに思いを込める。