「「嵩継さん」」
「安田医師」
同時に近づいて来た三つの声。
「お世話かけました。
すいません、車椅子と処置できるように
一式持って来て貰えますか?」
走ってきた三人に突っ立ったまま、
深くお辞儀をして、
わざと席を外して貰えるように
頼みごとをする。
三人が屋上から離れたのを
見計らって、
ゆっくりと海斗を抱えおこした。
オレが今からやろうとしていることは、
アイツのおふくろさんを
裏切ることになる。
そしてアイツの主治医の方針にも
背くことになる。
告げようと思っていた……。
なのにいざその時が来てみると、
オレ自身の鼓動の音の大きさに
押しつぶされそうで……。
「……嵩継……。
言いたいことあんだろ。
隠すなよ。
オレ……もう知ってんだ。
立ち聞き……したからさ」
思いつめたような表情で、
海斗はオレを真っ直ぐに見つめて
絞り出すように紡ぎだす。
立ち聞きしたから……。
その言葉に対して、
オレは何一つ言葉を返せなかった。



